40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

ゆるく考える・テーマパーク化する地球

ゆるく考える

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テーマパーク化する地球 (ゲンロン叢書)

テーマパーク化する地球 (ゲンロン叢書)

  • 作者:東浩紀
  • 発売日: 2019/06/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

人間は事実は共有できる。けれども価値は必ずしも共有できない。同じ事実から異なった価値が導かれることはあるし、その差異を認めなければ人々との共生はありえない。けれども日本人は、事実さえ共有すれば、必然的に価値も共有できると思い込んでいるところがあるのではないか。

日本人は「話せばわかる」の理想をどこかで信じている。けれど本当は「話してもわかりあえない」ことがあると諦めること、それこそが共生の道のはずだ。事実と価値を分ける批評は、その諦め=共生の道を伝えるための重要な手段だとぼくは考えている。(2018年)

 

この5年ほど、ブログ論壇サブカル論壇が盛り上がり、一時期の低調を超え、若い世代でまた評論が盛り上がりつつあるように見えるのは、いったいなぜなのか。ぼくはその理由こそが、コミュニケーション・ツールとしての新しい役割にあると思うのです。
評論の言語には、いまやそのようないささか情けない機能しか生き残っていない。本当に語りたい対象があまりに複雑で、こちらに沈黙を強いてくるだけのときに、その緩衝材として立ち現れ、人々にネタを提供し、おしゃべりを円滑にするような情けない機能しか。(2008年)

 

世界は狭くなった。旅をしても新しい情報は手に入らなくなった。けれども情報は、いくら体系化され公開されていても、それを探し出す欲望がなければ存在しないに等しい。その点ではぼくたちはいまや、情報の不足というより、むしろ情報への欲望の不足に悩まされている。
だからぼくたちは旅に出る。そして旅先で、故郷では思いつくことがなかった、新たな検索語を探す。自分のなかの隠された欲望を探す。(2012年)

 

旅をする根拠なんて見出そうとしてもないに決まっているから、なにも考えず、「チケットが取れたから行く」でいい。それで行ったら行ったでなにか必然的なことが起こるかもしれない。人生はそういうものでしかないし、そうでないと必然は生まれない。
すべての必然性はあとから発見されるものなのです。なにかが起こるのを期待したり、なにかを決定する時に必然性を探してはいけない。むしろ遡行的な必然性を受け入れること。(2015年)

 

ぼくにとっての哲学や批評はつねに、資本主義の時間から「はずれる」ためのものとしてあります。批評が病院だというのも、病院は日常の時間の外にあるものだからです。(2018年)

 

哲学とはなにか。その問いに対して20世紀の哲学者たちが出した答えもまた、それはゲームにすぎないというものだった。そこに真理はない。意味もない。

ただひとつ、ゲームはむしろ観客を生み出すためにこそ行われる。おそらく西洋においては、その哲学というゲームが生み出す観客こそが、「公共」と呼ばれ「市民」と呼ばれている。そして彼らこそが近代社会や民主主義の理念を支えている。(2016年)

 

 

感想

なにげなくYouTubeを見ていたら、東さんがゲンロン友の会(10期かけこみ&11期更新セット)への入会を呼びかける配信をやっていた。東さんを見るのも久しぶり。配信自体は定期的にやっているけど、全て有料なんで見れないんだよな。とにかく入会してくれと呼びかける番組を見続けるうち、何か入会したくなってきた。さすがに税込16,500円は軽い気持ちで入れないな、とは思ってたんだけど。結局は入会した。

このパターン、「ゲンロン0」の時と同じだよ。またサイン本をゲットしてしまった。いつもはこんな衝動買いみたいなことはしないんだけどね。でないとアリリタなんて出来ない。でも、なぜか東さんには惹かれてしまうんだよな。といいつつ、「ゲンロン0」以来著作は読んでないわけだけど。3年半ぶりってところか。

まあ、アリリタして時間はいくらでもある身だしね。毎日を無為に過ごすのもいいけど、たまには思考を活性化させるのもいい。「友の会」の入会期間は1年間続く。この機会に、じっくりと哲学・批評に触れてみるか。

 

入会特典として、最新作の「ゲンロン11」をゲットしたわけだけど。いきなりこれを読むよりは、過去作を読んで空白を埋めるべきか。ゲンロン1~10が丸々飛んでいるわけだからな。読むためには購入しかない。どうするか。決断する前に、まずは図書館で読めるものを読んでみることにした。まずは表題の2冊。

両者とも、2008年から2018年にかけて書かれたエッセイを集めたもの。発表年代が異なるものを集めているんで、当時関心を持っていたものから現在は離れていたり、取り組みが失敗していたり。その軌跡が分かるのは面白い。個人的に、東さんにはサブカル論から入ったクチなんで、素人の批評が溢れる中、プロがどう切り取るのかには興味あったんだけどね。そこを論じ続けることに意味は無いってのはその通りだと思うんで、仕方ないかな。「ゲンロン8」のゲーム特集、酷評されているようだけど読んでみたい。

 

旅について。僕は旅行が好きだからするのであって、そこで何かを得ようとは思っていない。今の自分に満足してるんで「変わりたい」なんて欲求もないし。ただ、そうでありつつ、意図せず得てしまうものもあるだろう。そういう偶然の出会いは歓迎したいかな。積極的に求めはしないけど。

今年は結局コロナの影響で満足に旅行できなかった。早く世の中が落ち着いてほしいもんだ。まあ、こういう時、無職は最強!ではあるんだけど。

 

哲学・批評について。これから親しんでいこうとする上で、まず初めにこれを考えておくってのは良かったかもな。

分断された世の中においても、それでも対話の場を作り、観客を生み出し、「公共」「市民」を創ろうとしている。東さんは一見飄々とした人に見えるけれど、かなり熱いものを持っているよな。僕自身、まだ分かっていない部分や理解しきれていない部分もあるだろうけど、これからしばらく追っていきたい。