40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

ゲンロン12

ゲンロン12

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「訂正可能性の哲学、あるいは新しい公共性について」(東浩紀

ぼくはこの時代においては、なにかについて中途半端に調べ、中途半端にコミットすることの価値を積極的に肯定するべきだと考えている。ぼくたちはどうせすべての問題に中途半端にしか関わることができないのだから、その条件を排除しない社会思想をきちんと立ち上げなければならないのだ。
それがむしろすべてのコミュニケーションの条件である。

 

「無料についての断章」(楠木建

その情報財が「文化」の範疇にあるか否か。ここに有料と無料の分かれ目がありそうだ。文化的情報財は有料視聴や有料購読を回復しつつある。
「文化的」とはどういうことか。精神を高揚し、心を動かす。その人の生活に何らかの影響を与える。刹那的な刺激への反射に終わらず、記憶として定着する。あっさり言えば「心に残る」。ここに文化的情報財とそうでないものの境界線がある。

 

「フリーと多様性は共存するか」(飯田泰之

広告モデルはその収益構造として画一化や中庸化の傾向を避けることはできない。だからこそ、消費の差別化に応える多様性ある会員制モデルが存在意義を持つと言えよう。

 

「芸術と宇宙技芸 第3回」(ユク・ホイ)

芸術はなによりまず精神生活に関与するものだ。

私たちは、芸術によって非合理的なものにアクセスできる。だからこそ、この(合理的な)テクノロジーの時代における芸術の役割について反省することは、やはり重要なことである。
芸術と哲学は、時代のなかに閉じ込められたものを解放しようと望む。そのとき思考は、つねに思考自身にとってすら未知のものとなるのである。

 

 

感想

東さんの批評。何かに深くコミットすることのできない、非専門家気質の僕にはありがたい提言。全力で乗っかりたい。中途半端なりに、その中途半端のレベルを少しずつでも全体的に上げていけるよう、精進していきたいものだ。

 

特集の、フリーについての論考もすごく面白かった。youtubeのような暇つぶしに時間の大半を使わず、「心に残る」、意味のある時間の使い方をしたい。ゲンロンの配信プラットフォーム「シラス」は、そのための選択肢の一つ。上手く利用していきたい。

 

芸術についての批評。合理の世界だけでは行き詰まる。特に僕は費用対効果、効率重視で生きてきた人間だから、そのカウンター面もちゃんと手当しないと偏った人間になってしまう。芸術・文学への関心を、もう少し上げていこう。
山水画の世界にはちょっと興味がある。色々調べてみよう。

 

引用はしなかったけど、「反自動化経済論」(小川さやか)もかなり良かった。SNSに溢れるデマについての考察も面白いし、新興国発展途上国におけるインフォーマル経済についても興味深い。世界一周旅行の際、現地の商売人に騙されるのは嫌だなあと身構えていたけど。それも、彼らが尊厳をもって生きるための道。否定して排除できるものではなく、「生きる」ことの中に深く刻まれ、続いてきたもの。こうして背景を知ると、少しはこちらも許容できる気分になってくるね。と言いつつ、出来る限りフォーマルなプラットフォームを利用して、格安でサービスを享受していきたいものだけど。

 

ゲンロン12、分厚い本だったけど、その分、心に残る多くの文章に出会うことが出来た。これにてゲンロン本誌は打ち止めで、次は来年夏~秋まで待たないといけない。間が空きすぎてロスになりそう。これまでは溢れるほど与えられ、それを取り入れるだけで精一杯だったけど。ようやく追いつき、時間の出来たこれからは、得たものを吸収し、自分の思想とし、行動に繋げるための期間としたい。