日日是好日
私たちは、ますますわからなくなるお点前を繰り返しながら、和菓子を食べ、道具に触り、花を眺め、掛け軸から吹いてくる風や水を感じた。
今という季節を、視覚、聴覚、嗅覚、味覚の五感ぜんぶで味わい、そして想像力で体験した。毎週、ただひたすら。
「雨の日は、雨を聴きなさい。心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一心に味わいなさい。そうすればわかるはずだ。自由になる道は、いつでも今ここにある」
過去や未来を思う限り、安心して生きることはできない。道は一つしかない。今を味わうことだ。過去も未来もなく、ただこの一瞬に没頭できた時、人間は自分がさえぎるもののない自由の中で生きていることに気づくのだ・・・。
雨の日は、雨を聴く。雪の日は、雪を見る。夏には、暑さを、冬には、身の切れるような寒さを味わう。・・・どんな日も、その日を思う存分味わう。
お茶とは、そういう「生き方」なのだ。
感想
これを原作にした同名の映画は観たことがあったため、読むかどうか迷ったんだけど。文字として読むのもまた感覚が変わるだろうし、映画では削ぎ落した部分もあるかもしれないと思い読書。結果、映画の映像を思い浮かべつつも、お茶により入り込むことの出来る、とても満足度の高い読書となった。
季節を感じる。茶器を、花を、掛け軸を、茶菓子を感じる。茶の世界のあらゆることを感じ、糧とする。それは、茶の世界だけでなく、日常・世の中で過ごしていても感じることのできることではあるんだろうけど。それを一つの茶室に凝縮し、感度を高める。本を読み進めながら、著者と一緒になって茶の世界の奥深さを堪能することができた。
といって、僕が実際に茶を始めるのはハードルが高いんだけどね。昔、茶器セットを買ってちょっとやってみたこともあるけどね。通り一遍で満足して終わらせてしまった。あれでは、茶の精髄を味わうことはできない。茶に拘る必要はないけど、日々を、一日一日を噛み締めるタイミングは、折々に設けていきたいと思った。五感全部で感じたい。
こうしてやりたいと思えることがあるのは良いこと。あとは、それを収束させず、ちゃんと行動して実践に結び付けること。今年は、過去の総まとめをする一年だった。そこで色々と過去の思いを掬ってきたんだから、来年は、そこで掬った思いを実践・昇華させる年としたい。それに、本書で感じた思いも乗せていこう。