キリスト教は邪教です!−現代語訳『アンチクリスト』−
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)
- 作者: フリードリッヒ・ニーチェ,適菜収
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/21
- メディア: 新書
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パウロの敵はアレクサンドリアの科学で鍛えられた文献学者と医者でした。彼らはキリスト教徒にダマされなかったからです。文献学者は「新約聖書」のウラ事情を見破りますし、医者はキリスト教徒がなぜ病気になったのかを考えます。文献学者は「詐欺」と言いますし、医者は「治らない」と診断するのでしょう。
人間は誰でもキリスト教徒になれるわけではありません。人間は悔い改めてキリスト教を信じるのではないのです。キリスト教徒になるためには、あらかじめ十分に病弱でなければなりません。
偉大な精神はものを疑うのです。確信に対抗するのです。精神力や自由は、疑うところから生まれるのです。ものごとを信じ込む人は、価値を判断することができません。ものごとを信じ込むことは、牢屋の中に入っているのと同じ。外の世界のことも、そして自分のことさえわからないのです。
感想
ニーチェについての本、七冊目。前に「いたこニーチェ」を読み、かなり面白かったので前著に当たるこの本も読んでみた。この本も物語調なのかと思ったら、普通の文章でちょっと肩透かし。でも中身は面白かった。キリスト教を切りまくり!読んでいて痛快だった。ニーチェの「アンチクリスト」を現代語訳したものなんだけど、原文がこんなに言いたい放題なのか、適菜さんが多少意訳を加えた結果なのかは分からない。原文至上主義でもないんで、今後も原文に当たるつもりはないし。
それにしても、ここまでキリスト教やその信者を切ってしまうと、彼らから反発しか招かないと思うんだけど。もっと冷静に、論理的に矛盾点を指摘していかないと彼らを更正させることが出来ない。まあ、病弱な彼らは「再起不能」ってことで、あえてこういう形式にしたのかもしれないけど。実際彼らは、頼る対象を必要としているわけだしな。それを無理に取り去ることもない。キリスト教を離れても、また別のを探すだけだし。って、僕まで口が悪くなっちゃったよ。
最後にもう一つ。
「新約聖書」の世界はほとんど病気。社会のクズや神経病患者、知恵遅れが、こっそり皆で集まったような、まるでロシアの小説のような世界なのです。
「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」を思い出して笑ってしまった。あの作品の登場人物はみんな酷かったからな。まあ、ニーチェはドストエフスキーについて好意的に書いているんだけど。