40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

小右記

はじめに
平安時代というのは、ともすれば『源氏物語』に代表される文学作品を基にして考える傾向が強かった。平安貴族が実際に恋愛と遊宴にばかり熱中しているように誤解している人が多かったのである。しかし、女房文学も一面での真実を伝えているとはいえ、平安貴族の真実の姿、特に男性貴族によってとり行われる政務や儀式は古記録を読み解くことによってしか解明できない。

 

小右記』はすべてが実資自身の記述によるものではなく、古くは懐平や公任、その後は資平や資房など、小野宮家を挙げて情報(書状、懐紙、笏紙、書冊、草子、また様々な文書など)を実資の許に持ち寄り、それを具注暦の暦の行の左側に貼り継いだうえで、実資が書き込みを行い、『小右記』の「記事」としたのであろう。それはまさに、小野宮家挙げての共有財産としての日記と称すべきものであった。

 

 

感想

最近、平安時代日記文学を続けて読んでいるので、同時代を別の視点から読んで理解を深めたいと思って。藤原道長の有名な句が出てくる本ということもあり、それが一番の関心だったんだけど、それ以外の部分も興味深く、とても楽しい読書となった。

 

小右記』自体は現代語訳で16巻にもなるような大作。大部分は政務・儀式の次第がつらつらと書かれているんだろう。著者もそれを目的に書き残したんだから当然。そういうのは最小限にし、面白い部分だけを抽出してくれるビギナーズクラシックはありがたい。それでも750ページ以上ある分厚い本になっていたけどね。

 

紫式部日記」を読み、道綱母(「蜻蛉日記」の著者)の娘が出世・成功していったのは分かったけれど。肝心の息子・道綱のほうは、残念なことになっていた模様。道綱母は教養人だったけど、結局これも政治とは関係ない部分の知識でしかない。本丸の政務・儀式について女性は知りようがなく、教えようもなかった、ってことなんだろうなあ。道綱自身に才覚があれば、それもやり様はあったんだろうけどね。実家のバックアップがないのはキツイ。記録を保持している実資とは対照的な人物で、その対比が面白いところ。

 

やっぱり同じ時代を固め読みするのは、色々な所との関連や深掘りが見つかっていいな。これからもしばらく、平安時代に浸っていこう。