40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

武士の家計簿

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

武士は知行の保有にこだわりながら、自分の知行地を一度も見ることなく死ぬ場合が珍しくなかった。例外はあるにせよ、江戸時代は「兵農分離」が基本である。武士は城下に屋敷を拝領し、そこに常駐することが義務づけられ、許可なく農村に立ち入るわけにはいかなかった。

明治維新がおきると、武士階級があれほど簡単に経済的特権を失った秘密は、実はここに隠されているように思う。現実の土地から切り離された領主権は弱いものであり、トップダウンの命令一つで比較的容易に解体されたのである。しかし、武士の領主権が現実の土地と結びついていた鹿児島藩などでは、そうはいかない。西南戦争など激烈な「士族反乱」を経験しなければならなかった。


「武士身分としての格式を保つために支出を強いられる費用」
召使いを雇う費用。親類や同僚と交際する費用。武家らしい儀礼行事をとりおこなう費用。そして、先祖・神仏を祭る費用。これは制度的・慣習的・文化的強制によって支出を強いられる費用である。
⇒猪山家では銀800匁。これは消費全体の約三分の一にあたる。現代人からみれば無駄のように思えるが、この費用を支出しないと、江戸時代の武家社会からは、確実にはじきだされ、生きていけなくなる。つまり、その身分であることにより不可避的に生じる費用である。


大きな社会変動のある時代には、「今いる組織の外に出ても、必要とされる技術や能力をもっているか」が人の死活をわける。かつて家柄を誇った士族たちの多くは、過去をなつかしみ、現状に不平をいい、そして将来を不安がった。彼らに未来はきていない。栄光の加賀藩とともに美しく沈んでいったのである。一方、自分の現状をなげくより、自分の現行をなげき、社会に役立つ技術を身に付けようとした士族には、未来がきた。恐れず、まっとうなことをすれば、よいのである・・・・・・。


感想
映画化もされた本。かなり人気だったため、このたびようやく借りられた。それだけのことはあり、やっぱり面白かった。
武士としての生き方について、また明治維新期の激動について、一つの家族の視点から詳しく見ることができた。出来事としては知っていても、その内実は分からなかったからな。この本で初めて知ったことも多かったし、当時の生活がより深く想像できた。もちろん、これはただの一例であり、全ての事例に当てはまるわけではないだろうけど。特に、猪山家はうまく激動を乗り越えられた家なわけだし。
特に、武士の「身分費用」についての話が面白かった。武士身分の維持のために全消費の三分の一も使っていてはなあ。自分の召使いよりお金を持っていないなんて、あり得ないだろ。見栄消費。っていうだけが理由じゃないのも辛いところだ。それなりの効用があって続いてきた制度だろうけど、いつまでもそれに縛られなくてはいけないのは辛いよな。そこまで酷くはなくても、今の世の中でも多少は見られることだろう。そんなのに囚われず、自由に生きていきたいなあ。まあ、既にそう生きているけど。今後とも。
明治移行期と、現代の共通性について。今の時代も、自分の立場に安住していては取り残され切り捨てられてしまうんだろう。そうならないよう、向上心をもって日々生きていこうと思っているけど。今自分のやっていることが、どれほどそれに貢献するのか、全然自信ないなあ。やっぱり、知識よりも経験に勝るものなし、だもんな。かと言って、今の立場・環境から飛び出すつもりなんてさらさらないし。これが僕の限界なんだろうな。まあ、堕ちたら堕ちたで、そこで楽しくやっていく自信はあるけどさ。なるようになる、か。