- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/05/19
- メディア: 新書
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魚は頭から腐る、という言葉がある。魚の身にあたる庶民は、意外と常に健全なのだ。しかし、頭が腐ると、それもいずれは身に及んでくる。かつては下部構造は上部構造に代わりうるとする説が流行ったが、あれも今では人間性に無知な人のいだいた幻想であったということが明らかになっている。つまり、ローマ史ならば、上部構造が機能しなくなると、上部構造自体はさっさと逃げてしまい、上部構造が機能しなくなったがゆえの弊害を、残された下部構造だけがモロにかぶる、という感じであったのだ。これが、ローマ帝国末期に起った真の悲劇である。
感想
「ローマ人の物語」を書いた塩野さんの著作。僕はこのシリーズのファンで、遡って塩野さんの著作はほとんど全て読んだ。なのでこの本も速攻で図書館で予約。買って読まないところが、塩野さんには申し訳ないんだけど。
それにしてもいいこと言うよなあ。危機の時代には指導者が頻繁に変わることや、魚は頭から腐ることなど、今後の日本の未来が不安になってしまうけど。「政策に継続性が無い」ってのは本当にその通りだよなあ。ただでさえ政策を進めるのが遅いのに、ようやく決まったことさえ修正や転換を繰り返す。停滞してしまって何も決まらない、進まない。やらなければいけないことは分かっているのに、目先の支持率や選挙を気にして抜本的な対策を取れず、票獲りのばら撒き政策しか取れない。こんな状態がいつまでも続いている。どうすればいいんだろう。既に頭は腐って逃げ出しており、今後はその弊害を被るばかりってことなのかなあ。
ここから立ち直れるのか、ローマ帝国のように衰退・崩壊してしまうのか。傍観者や逃亡者になるのではなく、自分に出来る範囲の責任は果たしていきたい。