- 作者: 金谷治訳注
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/11/16
- メディア: 文庫
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(先生がいわれた、「学んでも考えなければ、ものごとははっきりしない。考えても学ばなければ、独断におちいって危険である。」)
これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らずと為せ。是れ知るなり。
(知ったことは知ったこととし、知らないことは知らないこととする、それが知るということだ。)
子の曰く、中庸の徳たるや、其れ至れるかな。民鮮なきこと久し。
(中庸の道徳としての価値は、いかにも最上だね。だが、人民のあいだにとぼしくなってから久しいことだ。)
子の曰く、奢れば則ち不孫、倹なれば則ち固なり。
(先生がいわれた、「贅沢していると尊大になり、倹約していると頑固になる。」)
子貢、政を問う。子の曰く、食を足し兵を足し、民をしてこれを信ぜしむ。子貢が曰く、必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何れをか先きにせん。曰く、兵を去らん。曰く、必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何れをか先きにせん。曰く、食を去らん。古えより皆な死あり、民は信なくんば立たず。
(子貢が政治のことをおたずねした。先生はいわれた、「食糧を十分にし軍備を十分にして、人民には信を持たせることだ。」子貢が「どうしてもやむをえずに捨てるなら、この三つの中でどれを先きにしますか。」というと、先生は「軍備を捨てる。」といわれた。「どうしてもやむをえずに捨てるなら、あとの二つの中でどれを先きにしますか。」というと、「食糧を捨てる。昔からだれにも死はある。人民は信がなければ安定してやっていけない。」といわれた。)
感想
四書五経で一番有名だと思われる、論語を読んでみた。中に出てくる幾つかは、他のところで目にしたこともあったが、全部を通読したのは初めて。まあ格言集だよね。なかなか面白かったが、これだけたくさんあるとなかなか頭に残りづらい。本当は、一つひとつじっくり味わって読んでいかないといけないんだろう。
この本には、原文・読み下し・現代語訳を合わせて掲載してくれている。それが正式な楽しみ方だってのは分かってるんだけど。原文の味を知るためにも。でも初心者の僕としては、もっと解説を増やして欲しかったな。本との対話のための材料は多い方がいい。次はそういう本も読んでみよう。今回さらっと読んだ中で印象に残ったものを上に挙げてみた。
今回の読み方だと、自分の思想と同調するものばかり挙がってしまってるな。深く読んでないんだから、当然そうなってしまうだろう。でも良いこと言ってるよね。中庸とか。僕が目指している道だし。
面白かったのは、政治で大切なことは何か、についての問答。前に読んだ本の時もちょっと書いたけど、政府に対する信頼が失われているのは問題だってのは、本当にその通りだと思った。一番大事だっていう意見にはちょっとびっくりしたけど。でも、確かにそうなのかもしれない。民衆には夢や希望を持たせておくのが一番。今の人類は、知る権利と引き換えにして、多くのものを失っているのかもしれないなあ。これも、島地さんの言う、「知る悲しみ」ってやつなのかも。たとえ幸福が軽減されても、追い求めずにはいられない。