40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

通貨燃ゆ

通貨燃ゆ(日経ビジネス人文庫)

通貨燃ゆ(日経ビジネス人文庫)

日本にとっては煎じ詰めるところ、ドルとはそれが基軸通貨であり続けるかどうかを論じる対象ではない。基軸通貨であり続けさせるのに、日本として何ができるかを考える対象である。米国にはこれまでと同様か、むしろ一層積極的な政治・経済・軍事的関わりをこの地域にもっていてもらう必要がある。と同時に、自由市場の開放性を従前にも増して維持しておいてもらわなくてはならない。


米国はどこかで必ず政策の方向性を明らかにする国である。大統領府は沈黙していても、議会がある。ワシントンに数多く存在するシンクタンクの報告書は、政権の意向と全く無縁の、研究のための研究から生まれるものではない。公開情報を丹念に読んでいけば、政権の動き、狙いに当たりをつけることは決して不可能でない。今日われわれがその努力を十分行っているか、改めて反省してみてもいいだろう。


ブレトン・ウッズ会議に関して今なお真に驚くべきことは、事前の準備が米国において、「真珠湾」とほぼ同時に始まっていた一事である。米財務長官が財務省金融調査局局長に「連合国間安定基金」の青写真を書くよう命じたのは、早くも12月14日。「真珠湾」からちょうど一週間が経ったばかりの日曜日のことだった。これは後に、国際通貨基金IMF)となる組織である。
ポンドからドルへの基軸通貨の交代は、「自然に」起きたのではない。米国が周到な仕掛けをして「奪取」したものである。ドル基軸通貨体制は、権力的につくられた。その際の「敵」、英国は打ち負かされ、米国は戦争目的の一つを達成したのである。



感想
かなり面白かった!どの項目も面白すぎて、知らなかったことだらけで、すごく良質な時間を過ごすことができた。通貨も、経済的な側面だけでなく、政治的な側面が大きく関わっている。政治にも少し関心を持つようになった今だからこそ、より楽しめたのかもな。それにしても、どの問題も、本当に色々な面が複合的に絡み合っているんだな。そういう複雑性を解き明かすのは結構好きっぽいんで、是非ともその技術を磨いていきたい。そして今後に活かしていきたい。


著者が最後に指摘しているように、日本も外部環境に受身で対応するだけでなく、積極的に関与していかないといけないんだけど。でも、日本にニクソン・ショックを事前に察知することができなかったように、情報に対する感度の鈍さは相変わらず。「失敗の本質」でも指摘されていた点だけど、やっぱり日本ってのはそうなんだな。首尾一貫しすぎて笑えてくる。今後の世界は情報の価値がますます高まる。そのうち致命的な事態に陥らないかと心配でならないよ。既に片足突っ込んでるのかもしれないけど。


著者は日米間のEPAを早期に結ぶように主張している。アジア・太平洋諸国との関係強化も言っているし、きっとTPPには大賛成の立場なんだろうな。消費増税の話がとりあえず落ち着き、今またTPP論議が盛り上がってきたように感じる。本当、どうなるんだろう。


ユーロについての話も面白かった。この本が文庫化されて発売されたのが2010年5月。ギリシャ危機、そしてスペインやイタリアの動向等、事態はどんどん進行している。これもどうなるんだろうな。


この本の中で一番興味深かったのは、「米国はどこかで必ず政策の方向性を明らかにする国である」ってところ。物事がどんどん動いていく世の中にあって、少しでも先を見るためにそこに注視するのは面白いかも。旅行英語以上の英語力には特に興味なかったんだけど、この目的のためだったら、もっと本腰を入れて勉強してもいいかもな。他にも色々な情報収集手段を探ってみよう。