この世でいちばん大事な「カネ」の話

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)

そのまま行ったら破滅するに決まっている道を、人は突き進んでしまうことがある。「バカだ」「何で引き返せないんだ」、そういう人のことを、まるで対岸の火事のように思っている人たちは、きっとそう言うかもしれない。
でもね。世の中には正しいからっていったって、「だから何だ」っていうことがあるのよ。正論が、通用しない場所もある。そういう場所で、何とか生き抜こうとしたら、たとえまちがってたって、その人にとっては「そう生きるしかなかった」っていうことが、あるんじゃないか。

貧しさが何もかもをのみこんでいくような、ブラックホールみたいな世界にのみこまれないために、わたしは、絵にすがりついた。才能があろうがなかろうが、そんなことは関係なかった。

仕事っていうのは、壁にぶつかりながらも、出会った人たちの力を借りて、自分の居場所をつくっていくことでもあると思う。

感想
本「ニートの歩き方」で紹介されていたんで読んでみた。著者の金銭観と、それを形作ったこれまでの境遇について綴った本。
その壮絶な人生については、僕には及びもつかない。ただ、「そういう世界もあるよな」ってのが正直なところ。他人事のように言っている自覚はあるけれど、僕の認識している世界観を覆すほどの衝撃ってわけではなかった。世界ってのはそういうもの。著者も言うように、配られた札はそれなんだから、それで勝負するしかない。著者の作品に触れたのはこれが初めてだったんで、著者本人についての思い入れがあったらまた別だったのかもな。

そうして得られた著者の金銭観だけど、はっきり言って全然しっかりしたものとは言えない。本当に、「この世でいちばん大事」とは思ってないだろ。まあタイトルは、インパクトを狙ってのものだろうけど。著者が言うのとは逆に、未だお金を軽視しているように感じてしまった。ギャンブルに手を出すのもそうだし、リアルなお金と情報・バーチャルのお金を区別する感覚もそう。これも、元々の境遇・親の影響から来るのかと考えると、その鎖の強さに恐ろしくなる。僕自身はどんな鎖に縛られているんだろう、って。

まあ、僕の金銭感覚は平均よりもシビアだろうからね。ただ単に、読者対象ではなかったってだけ。著者が味わった境遇については、なかなか興味深かった。