- 作者: 灰谷健次郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 1998/06/23
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 17回
- この商品を含むブログ (62件) を見る
「人間いうたら自分ひとりのことしか考えてえへんときは不幸なもんや。そのことがこんど、ようわかった。人間言うたらどんなときでもひとりぼっちやとおもとったけど、そやなかった。たしかに人間はひとりぼっちやけど、『肝苦りさ』の心さえ失わへんかったら、ひとりぼっちの人間でもたくさんの人たちと暖こうにいきていけるということがわかったんや。」
あとがき
人々は過ぎ去った日々を忘れ、きょうの日のことのみを追って、せわしく生きています。一つの『生』のことを考える日本人は極端に少なくなりました。今ある『生』がどれほどたくさんの『死』や『悲しみ』の果てにあるかということを教える教師も少なくなりました。それは日本人全体の堕落です。死せる人々に応え得るような『生』が、今の日本にないとしたら、この日本という国は、いったい何なのでしょうか。
感想
沖縄に親しもう計画、第2弾。歴史だけではなくこういう小説も、沖縄へのイメージを膨らませてくれるだろうからな。
Amazonでの評価も高かった本作。初版本発行は1978年。解説によると、この本は発刊と同時に結構な反響を呼んだとのこと。当時はまだ、沖縄についてのこういった視点が少なかったのかもね。まあ、今だって理解が進んだとは言えないのかもしれないけど。
今読んでも、かなり引き込まれる話だった。ただ、「こういうのは沖縄だけに言える話でもないし」と思ってしまう自分もいる。また、彼らの思想にしても、理想化しすぎというか、それは見方の一面にすぎないんじゃないか、とか。別に相対化して価値を下げようってわけじゃないんだけどさ。こういう、主張の強い作品にはちょっと構えてしまう部分がある。こればかりに注目してしまって、他が疎かになるのが嫌、というか。
まあ、それが彼らの信念・より良く生きるための糧となるのなら、それで問題ない、とも思うんだけどね。気付きが得られたのならばそれで十分。結局、それぞれの人が、それぞれの受け取り方をすればいい。
主人公達が成長する姿は胸が熱くなる。この年齢でここまで考えられるんだろうか、とか、この年齢だからこそそこまで真っ直ぐ考えられるのかも、とか思ってしまった。僕にはどこまで残っていることか。別に相対化するんでもいいけれど、一つ一つの価値を薄めず、しっかりと思いを受け取り、吸収していきたい。