サウスバウンド
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/06/30
- メディア: 単行本
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「もちろん、あなたたちは永遠に親のものではないので、自立できると判断した時点で、独り立ちしてもかまいません。ただ15歳までは、おとうさんおかあさんと一緒に暮らしましょう。」
今日の篭城劇は、間違いなく大きなニュースになったことだろう。父は国民の目にどう映ったのか。憎まれはしないが、同情もされていないだろう。二郎は冷ややかな見方をしている。警察や企業に盾突く一人の男を、痛快に感じ、面白がりはするものの、我が身に置き換えたりはしない。テレビの前の大人たちは、一度も戦ったことがないし、この先も戦う気はない。闘う人間を、安全な場所から見物し、したり顔で論評する。そして最後には冷笑する。それが父以外の、大多数の大人だ。
感想
沖縄に親しもう計画、第3弾。Amazonで絶賛されている本なんだけど、僕には合わなかったなあ。絶賛している人たちも、別に一郎(父親)の思想に共感しているわけじゃないんだろうけど。全てを相対化・客観化して広く目配りしたい僕と、自分の主義主張を貫き通す一郎との、生き方の違い、かな。自分と違う生き方には、時に憧れなんかを抱くものだが、今回の本に関してはそう思えなかった。
息子の二郎もあまり好きになれなかった。子供特有の弱さ・愚かさが目に付いてしまって。大人や年上に翻弄されてしまうところとか、欲望をきちんと制御できないところとか。「太陽の子」の主人公も同じ6年生だったけど、あまりに成熟度が違いすぎる。まあ、二郎のほうが実態に近いんだろうけどさ。僕だって同じようなものだっただろうし、本当は強いことは言えないんだけどね。過去の自分を見ているようで嫌になるってことかな。
子供を巻き込んで波乱万丈な生き方をする両親だけど、それが親のエゴであることを自覚しているってのは、プラスポイント。無自覚に子供を支配している人っているからな。
自分の生き様を示し、子供には「自分で生き方を選べ」と言ってくれるのは、その後を考えればありがたいこと。旅立ちまでの日々も平穏にやらせてもらえたほうがさらにありがたいんだろうけどね。まあ、自分では選ばない道を見せてくれているんだから、視野は広がるだろう。