カラマーゾフの兄弟 2巻
- 作者: ドストエフスキー,亀山郁夫
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/11/09
- メディア: 文庫
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一人でこっそり富を貯えては、こう独りごちている。わたしはいまどんなに強くなったことか、どんなに安定していることか。しかし哀れにも、富を貯えれば貯えるほど、自分が自殺的というべき無力さの中に沈んでいくことに気付いてはいません。なぜなら、自分だけを頼みとすることに慣れ、一個の単位として全体から切り離されて、人の助けとか、人間とか人類なんか信じないように自分の心を馴らして、ただただ自分のお金や、自分が勝ち得た権利がなくなってしまうのではないかと怯えているからです。
個人の顔をまことに保証するものは、個人の孤立した努力の中にではなく、人間全体の一体性の中にこそあるといった考えなどを、人間の知性はいまやいたるところで笑い、まともに相手にしようともしません。
感想
そろそろ父親が死んで物語が動き出すのかと思ったが、まだぴんぴんしていた。そのため、相変わらずのあのぐだぐだとした感情が渦巻いている。ただ、今回は結構スムーズに読み進めることができた。話の本筋とはあまり関係なさそうだけど、イワンの「大審問官」に関するキリストが何を成したのか、何を人々に残したのか、についての強烈な反論は読んでいて楽しかった。やっぱり宗教に関する各人の主張ってのは興味深いもんだね。しかもそれがドストエフスキーという高度な知能を持った人の至った考えなわけだから、説得力もかなりあるし。宗教が日常世界を強く支配していた当時の時代背景をよく理解して読み進めないといけないんだろうな。まあ、何かに頼りたい気持ちってのは今でも変わりなく支配している感情なんだろうけど。
何にしても、第三巻を読むのがちょっと楽しみになってきた。