星を継ぐもの
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1980/05/23
- メディア: 文庫
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ネットで、「伏線がすごい本」「どんでん返しがすごい本」として紹介されていたSF本。それで興味を持って読んでみたんだけど、本当に凄かった。ここまで興奮しながら読んだ本は久しぶりだな。いやあ、良かった!
ネタバレしてしまうと読む価値が下がってしまうから、興味を持った人は下情報を入れずに読んでみてほしい。
月で、人類そのものの姿をした、「5万年前に死んだ人物」チャーリーが発見される。以後、その解明によってどんどん新事実が明らかにされていくんだけど、それによってどんどん解釈が変わっていくんだよな。全ては仮説で動いていた話ではあるんだけど、ぽんぽん認識を変更させられるので、混乱するというか、それが小気味いいというか。
提示される証拠が、二つの矛盾する結論を導く。最後にそれを解決する解釈が出てくるんだけど、その後にさらに認識を引っくり返す。それがまた、人類と類人猿を結ぶ連環がない理由とか、人間の強さの理由とか、人類が破滅の淵を回避した理由とかをうまく説明するんだから脱帽する。本当に、最後の最後まで楽しめた物語だった。
この物語には、色々と続編も発売されている。(「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」「内なる宇宙」)これらも読んでいきたい。
あと、雑誌「ビッグ コミックス スペシャル」でマンガ連載中。まあこっちは読まないだろうけど。
最後に一点。この世界の舞台設定は、
「歴史上のその一時期を通じて二十世紀の置土産だったイデオロギーや民族主義に根ざす緊張は科学技術の進歩によってもたらされた、全世界的な豊穣と出生率の低下によって霧消した。古来歴史を揺るがせていた対立と不信は民族、国家、党派、信教等が渾然と融和して巨大な、均一な地球社会が形成されるにつれて影をひそめた。すでにその生命を失って久しい政治家の理不尽な領土意識は自然に消滅し、州国家が成熟期に達すると、超大国の防衛予算は年々大幅に削減された。」
となっている。
この本が書かれた1977年時は、将来の世界についてこんな風に予想されていたのかな。後から言うのは卑怯だけど、楽観的だったんだなあ。今はまだ世界人口が増え続けているけれど、今世紀中には減少に転じることが予想されている。それが現実になったとしても、対立は終わらないだろう。特に、信教が融和するなんてあり得ない。まあ、この僕の感想も、さらなる後世から見れば、「悲観的だったんだなあ」で片づけられてしまうかもしれないけどさ。