40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

源氏物語 巻10

源氏物語 巻十 (講談社文庫)

源氏物語 巻十 (講談社文庫)

「すべては前世からの逃れられぬ御宿縁だったのだろう。これは仏のおはからいで人力ではどうしようもないことなのだ」

浮舟の法事⇒ 自殺はたいそう罪が深いものとお思いになりますので、その罪を軽くするように、七日毎に、経や仏像を供養するようになどということを、こまごまとお申しつけになりました。


源氏のしおり
この大長編小説は見方によれば、実に唐突に終っている。「夢浮橋」という題名のことばは、文中にない。作者は男と女の仲は、所詮、はかない夢の中の逢瀬のようだとでも言うつもりだったのか。

この巻の中での白眉は、何と言っても「浮舟」であろう。これは世評に高い「若菜」に勝るとも劣らない。宇治十帖のヒロイン浮舟が二人の男の間で身も心も揺れ動き、不貞の罪の意識にひとり苦しみ身投げを決意するまでの哀切さには、読者は同情を禁じ得ない。浮舟のあざやかな出現と、その数奇な運命の変転によって、ほかの二人の姉妹たちの影さえ薄くなってくる。

浮舟の苦悩に対して、二人の男はどれほど悩んだというのだろうか。匂宮の悩みは、ただ単純に、気に入った女を独占したいという欲情のあせりであり、薫の場合はいつでも愛よりも世間体を気にしていて、女の裏切りに対しても、自分の面子が傷つけられたという怒りが先に立っている。二人とも、浮舟の四十九日までは、嘆き悲しんでみせるが、それ以後は呆れるほどの早さで、ほかの女との情事に右往左往している。
このあたりの男の下らなさを、なぜ紫式部は綿々と書かねばならなかったか。所詮、男の心はその程度のもので、情熱も誠実もたかが知れていると言いたかったのではないだろうか。


感想
全10巻の大作を、ようやく読み終わった。2月の終わりから読み始めたんで、7ヶ月くらいかかった。感慨深い、と言いたいところだけど、最後がすごく唐突に感じた。この後も書き続ける予定だったのが、何かの事情で書けなくなったのか?それとも、これ以上は書いてもどうしようもない部分だからカットしたのか?何か、もやもやが残ってしまった感じ。まあいいや。
今回初めて源氏物語を通しで読み終えたわけだけど、当時の風習・文化、人々の考え方なんかが分かって興味深かった。これが書かれたのは平安時代中期(西暦1000年前後)。当時は仏教の思想が強く世の中を支配していたんだなあ。この世を儚み、辛いことばかりが起こる世の中だと悲観している。思い通りにならない世の中ではあるけれど、上流階級の人たちまでそう思っていたら、下々はどうなってしまうんだか。源氏物語では上流世界しか描いていないけれど、案外下のほうは楽しくやっていたのかもな。そこら辺を調べていくのも面白いかも。仏教の盛衰について調べるのも面白そう。仏教そのものについても、法事はその方式でやるくせに、ほとんど何も知らないからな。
源氏物語は、人間の感情について、特に男女関係の感情の機微を詳しく描いている。この部分も、この作品の魅力だよな。よく言われることだけど、人間の感情や気持ちの持ち方ってのは何百年たってもそう変わらない。と言って、現代においてそれらがすっきり解明されたわけでもない。相変わらず、ままならないものであり続けている。だからこそ人生ってのは楽しいのかもしれないけど。これがなくなってしまうと、ほとんどの作品において描くことがなくなっちゃうもんな。
源氏物語はついに制覇したんで、今後は別の古典大作を読んでいきたい。源氏と来たら、平家か?それとも、清少納言枕草子かなあ。