40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

デフレの正体

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

我々が目指すべきなのは、フランスやイタリアやスイスの製品に「ブランド力」で勝つことなのです。今の不景気を克服してもう一回アジアが伸びてきたときに、今の日本人並みに豊かな階層が大量に出現してきたときに、彼らがフランス、イタリア、スイスの製品を買うのか、日本製品を買うのか、日本の置かれている国際競争はそういう競争なのです。

不動産開発でいうと、ドバイの超高層開発に勝つのではなくて、パリの街並みよりも資産価値の高い中低層の街並みを東京や大阪につくれるかということが本当の勝負です。100年後も200年後も文化的価値を放ち続け商業を引き寄せる都市インフラ、日本で言えば京都の東山周辺みたいなものをつくれるか、そこに世界中の金持ちの上品な投資を呼び込めるか、これが日本の課題です。


地域経済を左右するのは何と言っても雇用の増減(就業者数の増減)であり、失業率だの有効求人倍率だのは定義上も現実にも必ずしも雇用の増減とは連動しない。


首都圏でも生産年齢人口は減っている。国税調査によると、首都圏一都三県は、00年から05年の間に106万人も人口が増えている。しかし、15〜64歳の人口は7万人減少している。年齢不詳者の増加分を加えなければ22万人の減少。(65歳以上は118万人増えている)

地域間格差は拡大の一途だ」だの、「高齢化は地方を蝕む病だ」だの根拠のない「空気」だけが世の中に蔓延しています。なに寝言を言っているのか。高齢者の激増、子供の減少、現役世代の減少、いずれも首都圏の真ん真ん中で起きている、首都圏住民自身の問題なのです。


モノづくり技術は誰が考えても、資源のない日本が外貨を獲得して生き残っていくための必要条件ですが、今の日本の問題は外貨を獲得することではなくて、獲得した外貨を国内で回すことなのです。昔から得意な技術開発の方ばかりに目が行って、内需振興がついついお留守になるという事態は、ぜひ避けていただかねばなりません。


高齢者の激増に対処するための「船中八策
①政府の資金は、本当に困窮した人、社会的弱者を救済することに集中的に使い、所得に関係なく給付されるような給付金、減税、所得控除の類は廃止していく。(医療と教育はその例外)
②年金制度の放棄
③戦後の住宅供給と同じ考え方で進める医療福祉分野の供給増加。公的介入によってそれなりに高めの最低線を保障しつつ、その先の快適性追及を市場経済原理に則って自由に認める。


感想
いやあ、面白かった!これは2010年の6月に刊行された本。当時からかなり話題になっていたし、この本の結論である、「デフレの原因は、生産年齢人口の減少だ」というのは聞いていたけど。でも実際に読んでみると、今まで知らなかったデータを色々と知ることが出来、勉強になった。地方からの若者を集めている首都圏ですら、生産年齢人口が減っているってのは知らなかった。「今の不景気は景気循環のせいではない、それを理由に改革を先送りにすべきでない」ってのは本当にその通り。


ただ、著者の主張には、色々と賛否両論があるみたいだけどね。僕がいつも読んでいる、経済学者の池田信夫さんのブログでも反論してたし。池田さんによると、今のデフレは「老人の高福祉・若者の高負担」が問題らしい。雇用慣行や社会保険の制度が、今の人口構成に対応できていないことが原因なんだって。
Amazonのレビューに書いてあった、「生産年齢人口が減るなら供給も減る、生産年齢人口が減り非生産年齢人口が増えるなら、逆にインフレになるはず」とか、「高齢化が進んでいる他の国ではデフレが起きていない」ってのもその通りだと思ったし。やっぱり、片側からの主張だけでなく、両面で聞くってのは大事だな。


とはいえ、本後半に提言されていた高齢者の激増に対処するための方法ってのは、問題解決に当たって有効なのではないかと思った。池田さんの言う、年金制度改革についても触れているわけだし。まあ、年金制度の放棄なんてしなくても、受給年齢を上げれば済む話だけどさ。今回は法案提出を見送ったみたいだけど、最終的にはどんどん上がっていくんだろう。それか、受給金額を減らすか。今のままで保つわけがないんだし。平均余命が上がっているんだからそれもやむなしだと思うけどね。そうなると、若者もさらに溜め込むようになって、さらにデフレが進行しちゃうのかもしれないな。何とかならないもんかね。
医療福祉の問題もなあ。大体、高齢者が増えて介護の需要が増えているはずなのに、賃金が抑えられているのがおかしいよな。需給バランスが全然成り立っていない。だから供給だって増えないんだよ。需要側も供給側も割りを食っている。サービスを求める人も、職を求める人もいるんだから、絶対に何とか出来ると思うんだけどなあ。
消費増税もどうなのかなあ。消費をどんどん切り詰めていって、最終的に生活必需品しか買わない・買えないような世の中になったら最悪だけどな。ギリシャみたいに行くところまで行っちゃったりして。まあ、日本はどん底から這い上がるのは得意そうな気がするけど。今程度の状況じゃあ、まだまだ余裕がありすぎて、何とも感じないんだろう。