40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

官僚のレトリック

官僚のレトリック―霞が関改革はなぜ迷走するのか

官僚のレトリック―霞が関改革はなぜ迷走するのか

予算編成、ムダ削減、外交など、いずれの局面でも、官邸が大戦略を示すことができていない。その結果、各大臣らがせっかく奮闘しているものの、結束して成果を達成することができずにいる。勢力が分散され、ときには同士討ちまで演じていた印象だ。
各大臣らが、それぞれの省内の官僚機構を掌握しきれていない。官僚機構を率いる"正規軍"としてではなく、"ゲリラ部隊"のような風情で戦っていることだ。これは、各大臣らの力不足というより、幹部官僚の手綱を握る仕掛けを用意しなかった官邸の責任が重大だ。


高度成長期をとっくに過ぎ、さらには世界最先端の高齢化社会への突入をはじめ、前例なき世界に入り込むにつれ、霞が関の本来業務たる、政策の分析・検討といった仕事は、どんどんと高度化している。これに対応できる"頭脳集団"の必要性は高まっているのだ。
学卒時の試験だけで身分を作るような歪んだ「エリート主義」は廃すべきだが、「限られた人を特別扱い」して人材を育て上げることは必要だと思う。ただし、私の考える「特別扱い」は、"特別な優遇"ではなく、"特別に厳しい扱い"だ。つまり、期待に応えられない場合は退職(アウト)ということだ。


「官僚主導」の根源は、官僚の世界を聖域化する公務員制度。
人事院」については、公務員の「労働基本権の制約」を解除することが鍵だ。制約されている協約締結権と争議権を両方とも付与し、その代わり「人事院」を廃止すればよい。
身分保障」については、まずは、幹部に限って外したらよい。民間企業なら、取締役は一般の従業員とは別の人事体系だ。従業員から取締役になるときは、いったん退職して退職金をもらい、任期付きで就任する。権限のあるポストには、それだけの責任とリスクも伴うのは当然のことだ。


民主党が、「"国家のこと"より"自分の選挙"を優先する国会議員」を育てる方針ならば、そんな政党に「脱官僚」を目指してほしくない。「脱官僚」の結果、頭の中は選挙戦術のことばかりの政治家たちが、「政治主導」と称して政策を決めるようになったら、国民にとっては悪夢だ。そういう政党や議員たちには、「官僚主導」の方がお似合いなのだ。



感想
政治関連の本、第二弾。政治が停滞しているのは政治家同士の足の引っ張り合いもあるけれど、政治家を支えるはずの官僚の思惑も大きく働いている。この本では、安倍・福田内閣渡辺喜美行政改革担当大臣の補佐官だった著者が、政府内部から、また政権交代後は外部からの目線で、改革が頓挫する様を描いている。


読み終わって感じるのは、やるせなさというか、無力感というか。政治家の中にも、本当に現状を変えようと努力している人はいる。でも、個々の政治家によって異なる重点の違いの為にその思いをまとめきれていない。また、みんながみんな、変えるための方法論をきちんと把握しているわけでもない。そこを、官僚に突かれてしまっている。


今の大臣と官僚の関係って、地方行政における首長と議員の関係に似ているところがあるな。官僚も議員も自分たちの利益のために一致して行動することが出来るけど、大臣も首長もそれに単独で立ち向かわなくてはいけない。でも、大臣は他の省庁との関係も考慮しないといけない分、より大変なんだろう。
だからこそ、大臣を単独で担当省庁に向かわせるのではなく、政府として一丸で方向性をまとめ上げ、戦略策定しないといけないのに。事業仕分けなんて、本当に茶番だったよな。


6/26に消費税増税法案が衆院で可決された。公務員改革についても、「党を割ってでも」くらいの覚悟を持って全力で取り組まないと進まないんだろう。しかも、消費税増税に関しては、財務省の完全バックアップもあったんだろうし。著者は脱官僚にあたっての提言も行っているけど、どれも当たり前のことを言っているんだけどなあ。これが進むのはいつの日になることやら。
でもまあ、どういう力が働いているのかってことを知れたのは面白かった。まずは仕組みを知らないことには、それを打ち破る戦略を立てることが出来ないわけだしね。


著者の最後の言葉も、まったくもってその通り。国民の側も、そんな候補者は落としてしまえばいいのに。結局、国民の意識の問題でもあるよな。次の選挙がいつ行われるのかは分からないけれど、今度はどんな選択をするんだろう。