40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

「病院」がトヨタを超える日

日本で暮らしていると気づきにくいことですが、日本の医療費は世界的に見ると驚くほど安く、むしろ安すぎるせいでさまざまな問題が噴出しているくらいなのです。
医療の現場が荒廃し、医療崩壊が叫ばれている原因は、一にも二にも財源不足です。患者が増えて医療が高度化・複雑化するほど人手が必要になるのに、支払われる医療費はとても採算ベースに乗るものではなく、働けば働くほど赤字になることさえ珍しくありません。そして病院は人を雇うお金がないまま、医師や看護師に限界を遥かに超えた超過勤務を強要し、それが彼らの離職や医療事故へとつながっていく。結果として、国民全員の命が危険にさらされる。


たとえ使い道を福祉目的に限定しようと、このまま消費税率が引き上げられれば、日本の医療は壊滅的なダメージを受けるでしょう。大部分の病院で経営が立ち行かなくなり、バタバタ廃業に追い込まれると思って間違いありません。なぜなら、医療機関にとっての消費税とは完全な「損税」だからです。(保険診療は消費税非課税だが、色々な費用には消費税がかかる)
現在、日本の病院は約7割が赤字に陥っています。どうにか黒字を計上しているところでも利益率1〜2パーセントがほとんどで、5パーセント以上の利益率を誇る病院など皆無に等しいのが実情です。
医療が本当の崩壊に追い込まれてしまわないためにはどうすればいいのでしょうか。その答えこそ、経営体質の強化であり、具体的には医療法人の株式会社化であり、医療に関するさまざまな規制の撤廃なのです。


私の考える新しい医療制度を提案します。まず第一に行うのは、「国民総背番号制」の導入です。続いて、収入や資産に応じて自己負担する医療費の上限を3〜5段階くらいで分けます。それぞれ上限までは自己負担とし、上限を超えた部分は公金によって補填する。
また、国民総背番号制を導入して登録カードを配る際には、それをICカード化して過去の診療情報をすべて記録させる仕組みをとるべきでしょう。おそらく、これだけで総医療費の3割程度はカットされるはずです。


私はかねがね、国家や民族は4本の柱によって支えられていて、そのうち1本でもなくなれば国は崩壊すると考えています。国を支える4本の柱、それは農業(第一次産業)、教育、医療、そして司法です。これらに比べれば、工業などは5番目、6番目の柱でしかありません。



感想
医療関係者の中にも、ここまで経営者的視点を持って積極的に活動している人がいたんだなあ。ゴッドハンドなんかはたまにテレビで特集されたりするけれど、病院経営や医療の将来を考えている人についてはあまり扱われていないように感じたので。単に僕が今までスルーしてきただけかもしれないけれど。
それに、ただ自分の意見を主張するだけでなく、実際に八王子やカンボジアで自分の考える医療を実践しているってのが凄いね。ちゃんと事業として成り立つことが実証されているのならば、今後どんどん広がっていくといいな。


著者の主張は急進的というか、今までの制度の抜本的改革を迫っている。でも、高齢化が進み、医療の崩壊が現実になろうとしている今、これくらいの対応をしないとどうしようもないんだろうね。医療費が安く抑えられているせいで病院が潰れてしまっては、本末転倒。ある程度の金持ち優遇は仕方ないとして、弱者切り捨てにだけはならないよう慎重に設計して、改革を進めていってほしい。過度な優遇制度の引き締めも合わせて。


この本の中で「壊滅的なダメージを受ける」とされた消費増税が決まった。政府は「社会保障の充実」も進めていくとのことだが、それで病院は助かるのか?対策はされているんだろうな?