
- 作者: 佐野眞一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/01/10
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 205回
- この商品を含むブログ (63件) を見る
孫正義の父方と母方のルーツを追って韓国を訪問し、父方と母方の係累にも会って強く感じたことは、この血族に堅気はいないな、という実感だった。彼ら一族を取材すればするほど、魑魅魍魎のイメージばかりが広がった。それは侮辱語ではなく、朝鮮から渡来した民族の悲しみと怒りの別名でもある。だが、こういう尋常ならざる一族からでなければ、孫正義は出てこない。
私はこう言いたい。孫正義よ、頼むから在日でいつづけてくれ。そして物議を醸しつづけてくれ。あなたがいない日本は、閉塞感が漂う退屈なだけの三等国になってしまうからである。それは「日本が大好き」というあなたも望まないだろうし、「三・一一」後大きく変わる新生ニッポンの誕生を期待する多くの日本人も望んではいない。
感想
著者の佐野 眞一さんの雑誌連載「ハシシタ 奴の本性」の騒動は結構話題になった。別にそれで興味を持って本書を読んだわけではないんだけど。その記事も読んでいないし、特に気にするつもりはない。ちょっと行き過ぎてしまった面はあったんだろうけど、橋下の対応も何だかな、という感じ。
佐野さんの取材力には定評があるみたい。この本でもそれが発揮されており、読み物としては面白かった。ただ、そもそも孫さん自身にそれほど興味があったわけでもないし、話題になったからというだけで読むのもどうかな、と反省。まあ、孫さんの生い立ち・背景については良く分かった。本にするだけの価値のある人生ではある。
在日の生き方や、そういう人たちが日本にいる理由や意味について考えられたのも良かった。在日は「出て行け」なんて言い方をする人もいるけど、僕も著者の言うように、「物議を醸しつづける」存在というのは必要なんだろうなと思う。それだけが存在理由じゃないけど、それだけでも十分意義がある。違いを認めず排除する社会では、絶対に生き辛くなる。純化の先にあるのは破滅だけ。
みんなが、清濁を併せ呑み、泰然としていられる心の余裕を持てたらいいね。自分自身もそうありたい。