フェルマーの最終定理
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/30
- メディア: 文庫
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「言葉にしようのない、美しい瞬間でした。とてもシンプルで、とてもエレガントで・・・。どうして見落としていたのか自分でもわからなくて、信じられない思いで二十分間もじっと見つめていました。私は自分の気持ちを抑えられなくて、とても興奮していました。あれは私の研究人生で最も重要な瞬間です。あれほどのことはもう二度となしえないでしょう」
訳者あとがき
フェルマー関係の本は数多く刊行されているけれども、フェルマーの最終定理の証明が数学全体にとってどういう意味をもつのかをドラマティックにわかりやすく描いているという点で、本書の面白さは群を抜いている。
かつては多くの人々が、これを証明したところでパズルが一つ解けたというだけで、数学全体にとって大した貢献にはならないと思っていたのではないだろうか。しかし実際には、ワイルズの証明によって数学の深い統一性が示されたわけである。
アイザック・ニュートンは、「私が他の人たちよりも多少とも遠くを見ることができたとしたら、それは巨人の肩に乗っているからです」と述べた。私にとって感動的だったのは、それと同じことが数学の世界でも言えるのだと実感できたことである。細分化されていると思っていた現代数学において、これだけ大勢の人の仕事と協力の上に、一つの大きなことがなし遂げられたのだ。
感想
これは凄い!読んでいて、興奮しながら没入したし、感動で胸が熱くなること数度。こういう本に巡り合うと、人生が豊かになるというか、生きていて良かったと思えるというか。本当に壮大な話。
世の中に役立つか役立たないか、そんなのとは関係無しに、自分の情熱の赴くまま、ひたすらに対象に向かう。その生き様にも感動する。僕自身、アリリタという何の世の中に貢献しない道を選ぼうとしているわけで、だとしても、というかだからこそ、自分の満足を最大化することに全力を傾けたいね。まあ、数学者はしっかりと世の中に貢献しているんだけど。
あと、数学界において、それぞれの研究者の活動が、しっかりと他者と結びつき、その上に立って物事が進んでいく様。訳者も言っているけれど、そういう協力関係が本当に成り立っている、というのも素晴らしい。僕ってちょっと、「協力」ということに否定的な感情を持っているところがあるからな。個人主義の塊でもあるし。これだけ世の中が発達し、細分化された中でも、他者の存在・研究が自分にとって意味がある、という。その繋がりがしっかりと味わえたのにも、すごく興奮した。
それに、数学者の発見の瞬間!他人事なのに、その場面を想像してすごく泣ける。凄いなあ。僕も一度でいいから味わってみたいもんだ。
この著者の本は面白そう。他にも色々と出しているようなので、さっそく予約した。読むのが楽しみだ。