40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

感想
株の優待でもらった図書カードがあったため、何か買ってみようと選んだのがこの本だ。新書のランキングで上位にあったもののうち、面白そうなものを探して見つけた。実際、かなり面白かった。

大学で研究職に携わる人の、新発見を巡る他大学との競争とか、ノーベル賞を受賞した人の発見経緯やその影で涙を飲んだ人の物語、日本で有名な野口英世の真実など、科学という切り口でかなり興味深く、スリリングに書かれている。こっちまで、研究の醍醐味や苦しさが伝わってきた。こんな体験をしてみたいもんだ。未知の現象を追うロマン。実際に取り組んでいる人はそんな感傷に浸っている暇なんてないんだろうけど。

動的平衡の章での言葉で、「生命とは要素が集合してできた構成物ではなく、要素の流れがもたらすところの効果なのである」とか「すべての原子は生命体の中を流れ、通り抜けている」とか「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない」とかは面白い。エントロピーの増大に対抗するため、生命は常に新生を繰り返しているのだ。本当に良く出来ている。これらの精密な作りに神の存在を見出す人がいるのもうなずける。実際、これほどの複雑な系が独りでに作り出されていいものだろうか。いくら無限の時間があったところで到達できる限界を超えているのではないだろうか。

僕としても、神の存在を全否定するつもりはない。ただ、既存宗教の言う神の存在を信じられないだけだ。そうやって自分たちだけが正しいと思い込む人がいるから世界は不幸に包まれているのだ。それにしても、人は一体どこまで到達できるのだろうか。遺伝子の仕組みを解明し、その改変までやってのける。大学での研究でもうお腹いっぱいだと思っていたけど、もう一度この世界に挑戦してみたい。その気持ちを強くしてくれた本だった。