読んでいない本について堂々と語る方法
- 作者: ピエール・バイヤール,大浦康介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/11/27
- メディア: 単行本
- 購入: 17人 クリック: 306回
- この商品を含むブログ (95件) を見る
真の教養とは網羅性をめざすもので、断片的な知識の集積に還元されるものではない。この全体の探求は、個々の書物に新たなまなざしを投げかけ、その個別性を超えて、個々の書物が他の書物と取り結ぶ関係に関心を払う方向へとわれわれを導くのである。真の読者が把握を試みるべきは、この書物どうしの関係である。教養の領域では、さまざまな思想の間の関係は、個々の思想そのものよりもはるかに重要だということになる。
われわれが一冊の本だけについて会話を交わすということはけっしてない。ある具体的なタイトルを介して、一連の書物が会話に絡んでくるのであって、個々の書物は、教養というもののひとつの観念全体へとわれわれを導く、この全体の一時的象徴にすぎない。われわれが何年もかけて築き上げてきた、われわれの大切な書物を秘蔵する「内なる図書館」は、会話の各瞬間において、他人の「内なる図書館」と関係を持つ。
このように、さまざまな機会に出会う書物のひとつひとつについては、詳しすぎることを言ってその意味を狭めることは慎み、むしろ、その潜在的可能性がいささかも失われないよう、その「ずれ」を最大限に尊重する方向でそれを迎え入れなければならない。そして、その書物から来るもの ―タイトル、断章、正しいあるいは間違った引用― を、人間どうしのあいだで創造可能な全ての関係へと開かなければならない。
感想
めちゃくちゃ面白い本だった!なんか、次々と良書に出会うことができて、本当に満足だ。「本を読むとはどういうことか?」というのを突き詰めていく。これまで持っていた固定観念が打ち壊されるのを感じた。まあ、そうやって本に入り込んで取り込まれてしまうのを諌めている本でもあるんだけどね。
本の主張に流されて自分の意見を失ってしまうのは嫌なことだけれど、でも著者の考えに触れて、それが本当にいいものだと思ったのならば、僕としてはどんどん柔軟に取り入れていきたいと思っている。そうして出来上がるのが全てを平均化した無難な存在になる、ってのなら問題だけど、そもそも人が何を取り入れるか自体、千差万別なわけで、何を選ぶか自体に自分を自分たらしめる部分があるのではないかと思う。
自分の固定観念に凝り固まり、全てを自分の尺度で判断してしまうとしたら、本を読むことに一体何の意味があるんだろう。「取り入れるのも取り入れないのも自分の自由」ってのが正しい読書の方法だと思う。また、自分の深層意識に眠っていた感情を浮かび上がらせることができるってのも面白いところだ。とにかくインプットを増やして、それに対する自分の反応を楽しむというか。本の内容を正しく理解できたかが重要なんじゃなくて、その本から自分が何を得られたかが大事なんだよね。それが著者の言いたかったこと、言ってさえいないことであったとしても。
自分だけの読書で終わらせず、色んな人との意見交換も楽しんでみたいなあ。自分が読んだ本と他人が読んだ本は違う、ということを念頭に置きつつ。あと、本と本との関係性に注目するって読み方も試してみたい。一冊の本の中でも、個々の内容を全体と対比しながら読む、という方法も心がけたい。部分最適より全体最適に惹かれる僕ならば、そういう読み方に相性もいいと思うし。