恋する文楽
- 作者: 広谷鏡子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/02
- メディア: 文庫
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たとえば、ツンと三味線が弾く。その同じ音で太夫は語るわけではない。太夫の体は楽器と言っていいが、正真正銘の楽器である三味線以上に、微妙な音を発する。それが三味線が達者になると、三味線の音程についていってしまうのだろう。太夫にとってはそれは、音の幅を狭めてしまうことになる。西洋音楽の音程という概念を、小学校で習ってしまった耳にはもう駄目だ、という話もあるからすごい。
なんという微妙かつ深遠な音の世界であろうか。不思議なものだ。演劇だってスポーツだって、まず、共演者を知れ、ライバルを知れ、と言うではないか。太夫と三味線に関しては、その限りにあらず。三味線の音をあえてわからずに、その音とせめぎあう、闘いあうとは。
感想
文楽の紹介文第二段。二冊とも堅苦しい説明文ではなく、文楽が好きだという自分の思いを語ってくれているので、すんなりと入り込むことができる。興味をそそられる。実際に見に行く段になったら演目の内容や基礎知識を詳しく調べるだろうけど、その前に、文楽に興味を持たせる・親しませるという点ではこういう形式のほうがいい感じだな。それに、必要最低限の知識は身に付いたように思うし。とりあえずはこんなもんでいいかな。