40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

歴史の使い方

歴史の使い方

歴史の使い方

日本の歴史は、実に独特だ。これほど見事に地域と民族の歴史が一致したところもほかにはないし、これほどはっきりとした継続性(日本の歴史が太古から今日まで、切れ目のない流れとして考えられている)や単一性(日本の国土の歴史と日本民族の歴史と、その双方をからめた日本国の歴史とが、ほぼ過不足なく一致している)、純粋性(日本の歴史は日本列島における日本人の活動にほぼ終始している)を持った歴史もない。そうなったのは、一にも二にも、日本列島の地理的条件によるものである。

歴史を見ると、「総論の大事さ」が浮かび上がってくる。よく「総論賛成各論反対だからうまくいかない」と言うが、実は総論に賛成していないから、各論に反対するのだ。歴史には、ビジョンの重要性が現れてくる。国家の改造から企業経営の改革まで、常に改革者は総論を明確にしなければならない。

武士の封禄はお米の現物支給だから、インフレには強いが、経済成長は反映されない。だから経済が成長し、生活水準が上がると、武士は相対的に貧困化する。徳川時代を通じて、経済が成長すれば武士階級はどんどん貧乏になる仕掛けになっていたのである。これでは武士が経済の成長を嫌い、好況を憎んだのも不思議ではあるまい。

1990年代に入って、小中学校で学級崩壊や不登校生の増加が生じているのは、どうしてか。それは、今の教育が規格大量生産型の近代工業社会に適わせたもので、これからはじまる知価社会では役に立たないことを、生徒たちが本能的に感じ取っているからだ。教育の崩壊現象は、個々の生徒や教師の問題にとどまらず、教育思想、さらに言えば近代工業社会の「文化」破綻に原因がある。今、世界は近代工業社会から知価社会へ、大変換しつつある。これに追いつくためには、口先小手先の改革ではなく、倫理観と美意識の変更を含む、体制と発想の転換が必要なのである。


感想
豆知識が色々と得られ、読んでいてすごく楽しかった。まあ、著者の主張通り、歴史は楽しむだけじゃなくてそれを使っていかないといけないんだけどね。故事から教訓を引き出して未来に当てはめる。それが自在にできるようになれば楽しいだろうなあ。それだけじゃなく、本当に大きな力になると思う。こういうのは漠然と歴史書を読んでるだけじゃ得られないからな。常に心がけていたいもんだ。最終的に無意識にそうできるようになったらいいのにな。まあ、そのためには初めは強制的にでも意識していって、習慣として刷り込まないと駄目なんだろうけど。
江戸時代の武士と農民の関係が、現代の官僚と不動産屋・建設業者の関係と対比されていたのが面白かった。前者は経済が成長する時にはあまり恩恵を得られないが、不況で世の中全体が暗くなると相対的に魅力が増す。今は公務員がかなり人気らしいからね。昔から同じようなことを繰り返してたんだなあ。それが反転するのはいつになるんだろう。