40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

世界を知る力

世界を知る力 (PHP新書)

世界を知る力 (PHP新書)

「世界を知る」といいつつ、実は、偏狭な認識の鋳型で「世界」をくり貫いているだけということが生じたりする。鋳型が同じである限り、断片的な情報をいくら集めたところで、「世界」の認識は何も変わらない。固まった世界認識をもつことは、「世界」が大きく変化する状況では非常に危険なことである。

日本人の勤勉さや技術力を否定する必要はない。しかし、わたしたちは、20世紀初頭から続いた密接な米中関係があったからこそ戦中の悲劇的な日米関係がもたらされたこと、そして、戦後に米中関係の混乱があったからこそ日米同盟がもたらされたことを忘れてはなるまい。まさに、「日米関係は米中関係」として展開されてきたのである。わたしたち日本人も、日米中のトライアングルで世界を認識することを、常に想起しなければならないだろう。

わたしたちは、「世界を知る」という言葉を耳にすると、とかく「教養を高めて世界を見渡す」といった理解に走りがちである。しかし、そのような態度で身に付けた教養など何も役に立ちはしない。世界を知れば知るほど、世界が不条理に満ちていることが見えてくるはずだ。その不条理に対する怒り、問題意識が、戦慄するがごとく胸に込み上げてくるようでなければ、人間としての知とは呼べない。たんなる知識はコンピュータにでも詰め込んでおけばいい。世界の不条理に目を向け、それを解説するのではなく、行動することで問題の解決にいたろうとする。そういう情念をもって世界に向き合うのでなければ、世界を知っても何の意味もないのである。


感想
世界を知るために、固定観念に基づいて情報を集めたり、個々の国ごとに調べていっても、その全体は見えてこない。この本では、「全体知」を掴むためのアプローチを紹介している。大中華圏、ユニオンジャックの矢、ユダヤネットワークといった、横のネットワークについて解説したり、米中関係と日本との関わりを解説したり。全体知や全体最適なんかにはもともと関心を持っているし、すごく興味深く読み進めることができた。自分の思考が何らかの殻に囚われていないか、常に注意を払っていたい。
情報を集めることの意味についての著者の提言はかなり深いところを突いている。知識だけ集めて教養を高めても、そんなことは何の役にも立たず、意味もない。知識は、行動するためにある。僕も知識を得るだけで満足してしまう部分があるので、自戒の言葉として常に心に留め、目的を見据えた行動を取っていきたい。