アメリカから〈自由〉が消える
- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2010/03/30
- メディア: 新書
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歴史を振り返れば、<言論の自由>は、それが最も必要とされる時に抑えこまれてきたということが見えてくる。とはいえ、それを可能にするのは政府ではない。<言論の自由>を抑えこむためにつくり出された日常のなかのさまざまな仕掛け、それらに煽られ人々の間に拡大していく<恐怖>。その<恐怖>に私たちの無知と無関心が力を与えてしまい、いつの間にか<言論の自由>が抑えこまれ、社会全体が閉じられていくのだ。<恐怖>に打ち勝つ一番の方法は、何が起きているかを正確に知ることだ。<愛国心>というものは、星条旗を掲げることや大統領の言葉を鵜呑みにすることでは決してなく、政府に憲法の理念を守らせることに主権者として責任を持つことなのだ。
感想
何というか、絶望感が湧いてくる内容だよな。次々と選択肢が狭められ、気付いたら行動できなくなっているという状況。気付かないことには行動できないのに、気付いた時には遅すぎる。どうすればいいんだか。そういう状況に陥らないためにできる事は、「何が起きているかを正確に知ること」しかないんだよな。正確に知るべき内容は、自分に関心のあることだけではない。それではナチス政権下で牧師の書いた詩と同じことになってしまう。「すべてが遅すぎた」という。
この本で扱っているのはアメリカの状況だけど、「ここは日本だから関係ない」なんて言ってはいられない。アメリカと同じシナリオが日本でも進むとは限らない。お題目や道程は違ったとしても、同じような思想の下、同じような結果に至りかねない。「まだ危惧するようなところまで進んではいない」とも言ってはいられない。危機感を抱く頃には、既に行動できなくなっているかもしれない。
これは、瞬間だけ対応すればいいというものではなく、今後ずっと続く、生き様を問われる問題だろう。自分には関係ないと思わず、今起きている状況を把握し、そのことの意味を理解する。背景を理解する。なぜそれが起きているのか、どこに向かっているのか。今後何が起こりうるのか。そしてそれに対応すべく行動する。そういう自分でありたい。