40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

日本辺境論

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

もっぱら外来の思想や方法の影響を一方的に受容することしかできない集団が、その集団の同一性を保持しようとしたら、アイデンティティの次数を一つ繰り上げるしかない。私たちがふらふらして、きょろきょろして、自分が自分であることにまったく自信が持てず、つねに新しいものにキャッチアップしようと浮き足立つのは、そういうことをするのが日本人であるというふうにナショナル・アイデンティティを規定したからです。

私たちは歴史を貫いて先行世代から受け継ぎ、後続世代に手渡すものが何かということについてほとんど何も語りません。代わりに何を語るかというと、他国との比較を語るのです。私たちは「日本はしかじかのものであらねばならない」という当為に準拠して国家像を形成するということをしません。できないのか、しないのか、それは次の問題として、私たちはひたすら他国との比較に熱中します。

現実主義者は既成事実しか見ない。状況をおのれの発意によって変えることを彼らはしません。すでに起きてしまって、趨勢が決したことに同意する。彼らにとっての「現実」には「これから起きること」は含まれません。「すでに起きたこと」だけが現実なのです。そもそも私たちは「日本とはどういう政治単位であり、どういう理念に基礎づけられ、どういう原理で統治されており、どういう未来を志向しているのか」という国民国家にとって必須の問いにさえ答えることができない。それが未来を志向しているからです。未来は日本的「現実主義者」の視野には入ってこない。


感想
「日本人論」について扱った本を初めて読んだので、かなり面白く読むことができた。筆者によると、これまでにもさんざん記述されてきたことらしいけど。でもこうして初めて触れる人もいるわけだから、筆者の言うようにこうして繰り返し論じる、というのも大切なことだな、と。
日本に次から次へとブームが起こる理由や、他国との比較でしか自国を語れないとか、大いに納得させられた。政治家が過去・現在に対処するだけで、将来を論じることができないのもそう。やっぱり、一度どん底まで落ち現実として認識しないと、何の行動も起こせないってことかなあ。
筆者の主張は、「この辺境性は治らないものだし、それはそれで利点もあるので、その道を突き進もう」というもの。でもどうなんだろう。辺境人の利点は、「外来物を偏見なく受け入れられる開放性・柔軟性」とのことだが、先行者・トップが全てを総取りするのが今の時代だからな。ネットで知識は瞬時に駆け巡るようにもなっているし。今までのように取り入れたものを組み合わせ、発展させて独自のものとするやり方では間に合わないような。このままだと下請けの位置に甘んじることになり、搾取されるだけの存在になってしまうんじゃないだろうか。やっぱり今のままではマズイんだと思う。
日本の成り立ちから規定される日本人の性格があることは受け入れた上で、その上で、これからの時代を生きていくためにどのように変わらなければいけないか、どうすればそれを無理なく実行できるのか、ということを考えていくべきなんじゃないだろうか。とりあえず自分自身が、辺境人から抜け出すために何が出来るかを考えていきたい。