ルポ貧困大国アメリカ Ⅱ
- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/01/21
- メディア: 新書
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アメリカ会計検査院第七代院長のデイビッド・ウォーカーは、国家や社会全体のニーズよりも、目先の要望ばかりを優先する政治家たちの狭い視野が、アメリカの長期的な財政不均衡の大きな原因だと批判する。「彼らの多くは次の選挙より先を見ることができないのです。だから全体像や、より大きな価値を見失ってしまう。問題は財政赤字ではなく、目先の利益を追ってできない約束をし続けることで、子や孫の将来につけを回す政府のやり方の方なのです」
いま私たちが直面している、教育に医療、高齢化に少子化、格差と貧困、そして戦争といった問題をつきつめてゆくと、戦争の継続を望む軍産複合体を筆頭に、学資ローンビジネス、労働組合や医産複合体、刑産複合体など、政府と手を結ぶことで利権を拡大させるさまざまな利益団体の存在が浮かびあがってくる。世界を飲みこもうとしているのは、「キャピタリズム(資本主義)」よりむしろ、「コーポラティズム(政府と企業の癒着主義)」の方だろう。
莫大な資金が投入される洗練されたマーケティング。デジタル化するメディアがそれを後押しする時、そこから身を守るために私たちには何ができるのか?民主主義はしくみではなく、人なのだ。
感想
今年の3月に前著を読み、ものすごく衝撃を受けた。その時点で、続編となる本書も発売されていたんだけど、例によって図書館の予約を待っていたらこんなに待つ羽目になった。まあ仕方ないんだけど。
テーマは前著でも扱われた学資ローン、社会保障、刑務所ビジネスについて。前著の発売から2年経ち、その後の経過を扱っているという面はあるけれど、あまり新鮮味はない。でも内容は重いし、考えさせられる。
それにしても、酷い状況だよなあ。この先には破滅しか待っていないように思える。日本の将来だって暗いけれど、アメリカだって負けず劣らず。どちらが先かって感じだな。今利益を得ている人たちが、自分たちのやり方を変えるなんてことはないだろうし。虐げられている側が立ち上がるしかないんだけど、搾取され目の前のことで精一杯の人たちに、そんな大局的・戦略的な行動が取れるんだろうか。支配者側が持っている金も力も情報も持っていないのに。そうやって諦めた時が終わりだ、ってのは分かってるんだけど、それにしたって絶望的な戦いに見えるなあ。搾取できる人がいなくなる崩壊の時までこのまま突き進みそう。
まだこうして警鐘を鳴らす人がいて、その状況に気付けるだけマシなのかもしれないが、それすら危機に晒されているってのが次著で扱うテーマだし。本当、どうしようもないな。