フリー
- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2009/11/21
- メディア: ハードカバー
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タンポポの視点から見れば、ほとんどの種子の損失は重要ではない。重要なのは、春が来るたびにすべての舗装道路のすべての裂け目がタンポポで埋まることだ。タンポポが望むのは、あらゆる繁殖の機会を利用することなのだ。これがムダを受け入れる方法だ。種子は気にならないほど安い。私たちはたくさんのものを捨てることには罪悪感を抱くし、受け入れにくいと感じるかもしれないが、これが潤沢であることの利点を適切に活かすための正しい方法なのだ。
SF作家にはひとつの不文律がある。物理学の法則を破るのは、ひとつの小説につきひとつかふたつまでで、それ以外は現実世界を踏襲する、というものだ。SF小説のおもしろさは、ルールが変わったときに、人間がどうふるまうかを見ることにあるのだ。一種のシミュレーションであり、ルールを変えることで人間についてより深く学ぶものだというのだ。SF作家がくり返し利用する仕掛けは、稀少なものを潤沢に変える機械だ。多くの小説はたんなる物語ではなくて、高価なものが無料に近づくにつれて何が起こるのかを、一冊の本の長さで考える思考実験なのだ。
競争市場では、価格は限界費用まで落ちる。そしてテクノロジー(情報処理能力、記憶容量、通信帯域幅)の限界費用は年々ゼロに近づいている。そのため、低い限界費用で複製、伝達できる情報は無料になりたがり、限界費用の高い情報は高価になりたがる。多くのアイデア商材の価格は引力の法則ならぬ、フリーの万有引力に引っ張られ、それについては抵抗するよりも、むしろ活かす方法を模索せよ、ということだ。そして潤沢になってしまった商品の価値はほかへと移ってしまうので、新たな稀少を探してそちらを換金化するべきだとも説いている。
感想
一年位前に発売された本。当時から話題になりずっと読みたいと思ってきていたんだけど、ようやく読むことができた。かなり面白かった。章と章の間にコラムがあって、ある企業が実践している無料サービスの例と、そのカラクリを紹介しているんだけど、なかなかよく考えられた戦略。グーグルの無料の電話番号案内サービスってのが面白い。将来的に、携帯電話向けの音声による検索サービスに活かされるとか。それに広告をつけて何千億と稼ぐらしい。凄いなあ。
無料の凄さは分かったけど、当然ながらそれを実際に活用するのは難しい。まずそもそも注目を集めることが難しいし、それを収益に結びつけることも難しい。無料の価値が分かったからといって誰にでも使えるわけではないけれど、戦略の一つとして、検討・模索していきたい。当たれば凄いもんなあ。考えるだけでわくわくする。想像するだけで終わらせたら駄目だけどね。