街場のメディア論
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/08/17
- メディア: 新書
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メディアが急速に力を失っている理由は、決して巷間伝えられているように、インターネットに取って代わられたからだけではないと僕は思います。そうではなくて、固有名と、血の通った身体を持った個人の「どうしても言いたいこと」ではなく、「誰でも言いそうなこと」だけを選択的に語っているうちに、そのようなものなら存在しなくなっても誰も困らないという平明な事実に人々が気づいてしまった。そういうことではないかと思うのです。
僕は書籍というのは「買い置き」されることによってはじめて教化的に機能するものだと思っています。僕たちは「今読みたい本」を買うわけではありません。そうではなくて「いずれ読まねばならぬ本」を買うのです。それらの「いずれ読まねばならぬ本」を「読みたい」と実感し、「読める」だけのリテラシーを備えた、そんな「十分に知性的・情緒的に成熟を果たした自分」にいつかはなりたいという欲望が僕たちをある種の書物を書棚に配架する行動へ向かわせるのです。
本棚は人間関係を取り結ぶためにきわめて有益な情報を提供してくれます。だって、人と付き合うときに知るべきことは、その人が「ほんとうはなにものであるか」よりもむしろその人が「どんな人間であると思われたがっているか」に決まっているからです。
感想
やっぱり内田さんの本は面白いなあ。こういう、僕に新しい視点を提供してくれる人の本ってのは大事にしていきたいな。内田さんに限らず、どんどんそういう人を開拓していきたいと思ってるんだけど。
結婚についての話は面白い。結婚してみないことには、自分がどんな人間なのか、自分がそれに何を求めているのかは分からない。確かにそうなんだろうな。でもそれって、その結婚がうまくいくかどうかは事前には分からないってことだからなあ。そういう博打ってあまりしたくないな。分かりきった結末なんて面白くないだろうけどさ。それに僕は、与えられた条件のもとで満足を得られる人間だと思うし、相手も同じタイプなら上手くいくだろう。
メディアの没落の理由も面白い。どこも一方向に偏った同じような報道をしているから、力を失うんだよな。同じことしか言わないなら、別にそこから聞く必要は無い。お墨付きを貰って安心する、なんてことに時間を費やすつもりはないんだよ。そうじゃなくて、自分には無い、考えもしなかった視点・立場からの発言により、こちらに気付きを与えてくれるからこそ価値があるのに。僕が内田樹さん、小林よしのりさん、島地勝彦さんに惹かれるのは、今までの自分を形作っていた価値観・知識を打ち破ってくれるからだよな。もっともっと知らない世界を味わっていきたい。