プロカウンセラーの聞く技術
- 作者: 東山紘久
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2000/09/01
- メディア: 単行本
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相手の話をよく聞こう、理解しようとする人は、正しいことにのみ目を向けるのではなく、人間の弱い部分、影の部分に対しても理解があるのです。いわゆる評論家や正しいことばかりを言う識者とは違い、相手の悪の部分や弱い部分も認められるということなのです。
聞き上手とは、LISTENすることで、ASKすることではありません。たずねるのと聞くのとのいちばん大きな差は、「たずねる」のが質問する人の意図にそっているのに対して、「聞く」のは話し手の意図にそっていることです。だからたずねてばかりいると、自分が望んでいる情報ばかりを集める結果になり、相手がその人なりの相手の立場から発した情報が得られなくなってしまいます。
話し手は聞き手との対等感が感じられたときから、話しはじめます。話はどんどん広がり、深まります。そして、話し手が聞き手との対等感がもてなくなると話が止まります。話し手は聞き手の人間性をたしかめたくなるからです。
論理と感情の会話が、会社や公の席ではめったに起こらないのは、論理が優先されるためです。だから公式な関係では、なかなか仲よしにはなれないのです。ではどうすれば、論理と感情の会話が実りのあるものになるのでしょう。それは、相手が感情を出したときは、こちらは説明をやめ、相手の感情を受け止めていくのです。
感想
自分の考えは自分にしか適用できないことが多いものです。ふつうの人は、自分の経験談を話すことが相手の経験値を増すと考えています。これはあながち否定できませんが、実際は話し手が考えているほどの効果はないのです。なぜなら、経験・学習というのは、実地経験しないとわからないことのほうが大きく、自分の体験は、そのときのタイミングや状況に合って、うまくいったことなのです。同じような機会はまずありません。
著者のこの意見に、全面的に同意する。こう思ってしまうからこそ、僕は人と話すのが苦手なんだよなあ。仲がいい人であれば、こちらがどう思っているのかを知りたいと思ってくれるし、共感してもらえる部分もあるだろうから、普通に話すことができる。でも、初対面とかそれほどの仲でない人に対しては、「何を提供してあげられるんだろう」って、躊躇してしまうんだよな。僕の読書ラインナップを見れば分かるとおり、僕の興味は哲学・歴史・ビジネスなんかの固くて重いものが多い。興味が合う人と深く話し合ってみたいって願望はあるんだけど、軽く話せるようなジャンルのものじゃないからな。面白い話ができるのであれば、中身がなくても話す価値があるだろう。でも、そういうことができる性格でもないからな。
というわけで僕が辿り着いたのが、「聞き上手になりたい」ってこと。これであれば、「相手の興味がない」なんてことは起こりえないし。僕が知らないジャンルのことも多いだろうけど、基本的に、僕は色々な方面の知識や、人の考え方を知りたいって願望があるし。両者の願望に一番合っているからな。その立ち位置をもっと極めるためにも、どうやって相手の話を引き出していけばいいのか、どういうふうに聞けばいいのか、知っていきたい。聞くことのプロの聞く技術について、すごく興味を持って読んでみた。
これはあれだな、既に「話したい」と思っている人に対して、それを更に引き出すための方法だな。特に会話の体勢に入っているわけではない人に対して、そうするよう促すためのものではない。それと、一対一が原則。こちらが聞く体勢を作っていても、話し手が複数人いたんじゃあ、こちらが置いてけぼりを食らうだけ。
それはそれとして、参考になる部分も多かった。僕もカウンセラーと同じような考え方をしている部分もあって、ちょっと嬉しかった。まあ、その実践度合いは天地ほどの差があるんだろうけどさ。もっと経験を積んで、どんどん聞く技術を向上させたい。