傷物語
- 作者: 西尾維新,VOFAN
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/05/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 44人 クリック: 699回
- この商品を含むブログ (360件) を見る
羽川「嘘。人間嫌いとか世を拗ねてる人とか、そういうのとは阿良々木くんは違う。それくらいはわかるよ。阿良々木くん、少なくとも私と話しているときは楽しそうだった」
あのときキスショットを見捨てられなかったのは―こうなってしまえばわかる、僕の心の弱さだった。それこそ、自己犠牲ならぬ自己満足である。
感想
前に読んだ、化物語の続編。続編というか過去編。前作では語られなかった、主人公が吸血鬼になった経緯について。前作ではこの部分、全然明かしてくれなかったからな。流れが分かってすっきりした。それに、僕が疑問に感じていた、「主人公に友達がいなかった理由」についても語られていた。まあ、その説明で完全に納得したわけでもないんだけど。
「友達を作ると、人間強度が下がる」と言う主人公。気持ちが分からないでもないな。僕も一人で過ごすのは好きだし。それに、人から過度に影響を受けたくないっていう思いもある。本を読むときもそうかも。良い影響を受け、成長したいって思っているくせに、「人生を変える一冊」「人生を変える他者」なんかには出会いたくない。たとえそう感じることがあったとしても、そんなのは認めない。完全な存在・主張なんてないからな。盲目的に信じて、自分の道を他者に委ねるなんて真似は、絶対にしない。程よい刺激ならば大歓迎なんだけどね。
今までの自分を否定したくないって気持ちもある。これまでの積み重ねの上に今の自分は成り立っており、僕は現状を肯定的に捉えているから。もちろん、現状に留まるつもりはないけれど、今の自分でも十分に満足している。
まあ、そんなに構えて人と接したり、本を読んだりしているわけじゃないけどさ。それでは何も得られない。今の自分を塗り消されてしまうほど薄っぺらな人生を歩んできてはいないし、それなりに自信もある。だから、どんどん影響を受けようと思っている。程度問題だよな。
主人公が言う「人間強度」ってのも、どれほど本気で言っているのかは分からない。建前のようであり、本気のようであり。主人公自身も、それが単なる自己弁護ではないか?と自問したりする。まあ、どちらが「本当の心」ってこともないんだろうな。いや、どちらも「本当の心」なのかな。
絶対の正解なんてない。主人公がキスショットを助けて血を吸われたことも、最後の決着の付け方も、「正しい答え」なんか無い。そういう考え方・生き方こそが、人生の醍醐味かな、なんて思ってるんだけど。
なんか物語とは全然違う方向に思考が飛んでいった気もするけど、話自体は結構面白かった。