上野先生、勝手に死なれちゃ困ります
上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください (光文社新書)
- 作者: 上野千鶴子,古市憲寿
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/10/18
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 78回
- この商品を含むブログ (29件) を見る
上野「非常に不安なのは、今の若者が、選択する主体として信頼に足る人々なのかどうなのかっていうこと。先のことを考えない国民を育ててしまった国に、先はないもの。当事者にならない、傍観者にしかならない若者たち、その日暮らしで問題を先送りし続ける国民を育てたってことは問題ね。深刻な事故や事件が起きないと当事者にならないっていうのは、悲惨すぎるよ。社会も個人も、ハードランディングで高い授業料を払って、初めて学習するっていうのは、やっぱりまずすぎる。フクシマがよい例です。これだけの授業料を払って、それでも学ばないとしたら、もっと悲惨ね。」
古市「上野先生の発想の基本は、自己責任で自己決定なんですね。人生というのは、自分で決めて、自分で選んで、その結果を得たり、その代償を払うものということですよね。」
上野「一番の基本は、親子だろうが夫婦だろうが、自分の人生は自分で生きるしかないってことなの。」
上野「たとえどんなにつらい現実であっても、まず事実を知ることが必要。それに対処する選択肢が生まれるから。選択肢を示すっていうことは大事だと思う。選択肢っていうものは、多ければ多いほどいい。」
「実は」っていう裏をちゃんと知っていて選ぶのと、何も知らずに選ばされているのとは全然違う。それは大きな違い。本当にしたくて結婚するのと、それしか道がなくって結婚する人って、同じ既婚者でも全然違うでしょ。
感想
上野さんと古市さんが、介護問題について対談する本。介護について参考になる部分もあったが、それ以外のところも面白かった。上野さんや古市さんがどういう人なのか、どういう立ち位置・考えなのか、ってのがよく分かったし。でもこれって、キャラを作った部分ってないのかな。ポジショントークで議論をうまく転がすためじゃなくて?古市さんの、「親より先に死んだらいけないっていう規範よりは、親に先に死んでほしくないっていう気持ちのほうが強いかな。」っていう発言にはかなり引いた。どこまで子供なんだよ。これが現代の若者のリアルなのか?
育児について。うちの母親は「きっちり育児」だったな。勉強についてはあまり言われなかったけど、しつけは厳しかった。行き過ぎた面もあったと思うけど、まあ比較的上手くいったほうなのかな。多分。父親は全く口出ししない人だった。ただ、「人様に迷惑をかけず、自立して生きる」という方針はあったみたい。それもとりあえず達成できているあたり、運が良かったのか、知らないところで影響を受け、導かれていたのか。
自己責任・自己決定ってのは、上野さんの意見と同じだな。人に自分の人生を預けるなんて、絶対にしたくない。預けている人って、よくそんな状態で安心できるよな。多分、先のことをあまり考えていないんだろう。別にそれを否定するつもりはない。それも生き方の一つ。ただ、僕は真似するつもりはない。
逆に、選択肢についての意見は、僕は上野さんとは違う立場だな。選択することが出来る人に対しては、選択肢を示すのがいいだろう。でも、選択肢が多過ぎると選択が困難になるし、そもそも選択を望んでいない人もいる。選択肢の多さは、そのまま幸福には繋がらない。
複数の道から一つを選ばせることは、「あの時別の道を選んでおけば良かった」という後悔を生じさせる原因にもなるし、自分の選んだ道を突き進む覚悟を揺らがせる。選択肢がなければ、その道で頑張る以外ないんだからな。そこに100%を注げる。それが成功に繋がるってことも、多いだろう。何を選ぶかよりも、そこにどれだけのものを込められるか、のほうが大事だと思う。まあ、それでも合わないことってのはあるんだけどさ。そういう人にとっては、選択肢があることはありがたいだろうな。
自分が望んでいるからって、相手も同じように思っているとは限らない。とはいえ、どっちかしか取れないのならば、やっぱり選択肢の多さを取るしかないかな。自分で経験して質を磨いていくしかないんだろう。