さいごの色街飛田
- 作者: 井上理津子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/10/22
- メディア: 単行本
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多くの「女の子」「おばちゃん」は、他の職業を選択することができないために、飛田で働いている。他の職業を選べないのは、連鎖する貧困に抗えないからだ。抗うためのベースとなる家庭教育、学校教育、社会教育が欠落した中に、育たざるを得なかった。多くは十代で親になる。親になると、わが子を、かつての自分と類似した状況下におくことになる。
「この商売をして、よかったと思うことは一つもない」と、料亭経営者のマツノさんは言った。「現状満足度はゼロ%や」と、女の子を経ておばちゃんになったタエコさんも言った。それでも、みんな、生きていくために飛田にいる。
感想
「飛田」という地名は、この本がネットで紹介されているのを見て初めて知った。吉原やススキノ等、各地に風俗街はあるが、ここはちょっと独特なんだとか。体験してみたいとまでは思わないけど、どんな場所なのかちょっと興味がある。というわけで読んでみた。まあ、知りたければネットでいくらでも体験記が見つかるんだけどね。本のほうが、ある程度まとまった情報を手軽に入手できるかと思って。
期待通り、それなりの情報は得られた。こんなもんで満足。とはいえ、12年も時間をかけて取材しておいて、この程度の情報密度なのか、と思わないでもなかったけど。やっぱり、女性ライターが取り組むような内容ではなかったような。女性だと、中に入るのだって一苦労だろうし。面接という名目で潜り込んでいたけど、その手法もどうだろう、って感じ。
それに、著者の飛田に対するスタンスがなあ。飛田という街自体は気に入っているみたいだけど、そこで行われている行為には批判的なのが文章に滲み出ている。中立の立場を装ってはいるけど。まあ、女性からしたらそうだろうけどさ。ならばなんでこれをテーマに選んだんだか。使命感みたいな熱いものも特に感じなかったし。
こういう場所で働く女性について。この道を選ばざるを得ないのだとしたら、やるせないよな。自己責任とも言えない土壌・背景ってのは確かに存在する。小遣い稼ぎのために自ら望んで来たんならば問題ないんだけどさ。選択肢があっても、その存在を知らなければ意味が無い。情報は力。そう思うことが出来、実際に集めることが出来、それを活用することが出来る環境にいられたのは、感謝すべきことだよな。その立ち位置は今後も強化していきたい。
風俗店にはヤクザが絡んでいるところが多いらしい。この本の中でも、著者がヤクザに取材をしている。まあ、飛田ではあまり接点はないらしいけど。前に元ヤクザが書いた本を読んだことがあるけれど、この世界も知らないことだらけだし、追ってみるのも面白そうだな。