40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

さいごの色街飛田

さいごの色街 飛田

さいごの色街 飛田

飛田の「料亭」の主な構成員は、経営者、おねえさん、おばちゃん(曳き子)の三者である。料亭の数は158軒(2010年)。一人で複数軒を持つ人もいるから、経営者は140人余り、おねえさんは昼夜合わせて推定450人、おばちゃんは推定200人。


多くの「女の子」「おばちゃん」は、他の職業を選択することができないために、飛田で働いている。他の職業を選べないのは、連鎖する貧困に抗えないからだ。抗うためのベースとなる家庭教育、学校教育、社会教育が欠落した中に、育たざるを得なかった。多くは十代で親になる。親になると、わが子を、かつての自分と類似した状況下におくことになる。


「この商売をして、よかったと思うことは一つもない」と、料亭経営者のマツノさんは言った。「現状満足度はゼロ%や」と、女の子を経ておばちゃんになったタエコさんも言った。それでも、みんな、生きていくために飛田にいる。



感想
「飛田」という地名は、この本がネットで紹介されているのを見て初めて知った。吉原やススキノ等、各地に風俗街はあるが、ここはちょっと独特なんだとか。体験してみたいとまでは思わないけど、どんな場所なのかちょっと興味がある。というわけで読んでみた。まあ、知りたければネットでいくらでも体験記が見つかるんだけどね。本のほうが、ある程度まとまった情報を手軽に入手できるかと思って。


期待通り、それなりの情報は得られた。こんなもんで満足。とはいえ、12年も時間をかけて取材しておいて、この程度の情報密度なのか、と思わないでもなかったけど。やっぱり、女性ライターが取り組むような内容ではなかったような。女性だと、中に入るのだって一苦労だろうし。面接という名目で潜り込んでいたけど、その手法もどうだろう、って感じ。
それに、著者の飛田に対するスタンスがなあ。飛田という街自体は気に入っているみたいだけど、そこで行われている行為には批判的なのが文章に滲み出ている。中立の立場を装ってはいるけど。まあ、女性からしたらそうだろうけどさ。ならばなんでこれをテーマに選んだんだか。使命感みたいな熱いものも特に感じなかったし。


こういう場所で働く女性について。この道を選ばざるを得ないのだとしたら、やるせないよな。自己責任とも言えない土壌・背景ってのは確かに存在する。小遣い稼ぎのために自ら望んで来たんならば問題ないんだけどさ。選択肢があっても、その存在を知らなければ意味が無い。情報は力。そう思うことが出来、実際に集めることが出来、それを活用することが出来る環境にいられたのは、感謝すべきことだよな。その立ち位置は今後も強化していきたい。


風俗店にはヤクザが絡んでいるところが多いらしい。この本の中でも、著者がヤクザに取材をしている。まあ、飛田ではあまり接点はないらしいけど。前に元ヤクザが書いた本を読んだことがあるけれど、この世界も知らないことだらけだし、追ってみるのも面白そうだな。