40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

感性の限界−不合理性・不自由性・不条理性

認知科学者「実はヒトは、「自律的システム」の独自の働きによって、自分でもそれが理屈に合わないとわかっていながら、不合理な行動を取ることが確認されているのです。」


進化論者「幼児が大人に「盲目的に服従する」という行動様式は、脳に遺伝的に組み込まれているのです。ヒトは反抗期や思春期を経て成長し、脳内に「分析的システム」を構築しますから、その後は、自分で考えて行動できるようになります。ただし、大人になった後でも、「自律的システム」と「分析的システム」に葛藤が生じる状況に置かれると、混乱をきたして、結果的に、より根源的な「自律的システム」に支配された行動を取ると考えられるわけです。」


認知科学者「私たちの脳内の「自律的システム」は無意識的に利己的遺伝子の利益に沿って判断を下していますが、「分析的システム」はそうではなく、あくまでどうすれば私たち自身の利益を最大にできるかを合理的に考えることができます。
ヒトの脳内の「分析的システム」は、高度な「シミュレーション能力」と「コミュニケーション能力」を身に付けてきたわけで、この能力は、未来社会になればなるほど効率的に進化するはずです。そうなれば、自由意志も同時に進化するはずです。」



認知科学者「カルト教団にしてもテロリスト集団にしても、彼らを直接的に結びつけているのは、「信仰」や「信条」などという観念論的な理想よりも、むしろ「共感」や「排他」といった感情的な結合にあるのです。いったんそのような集団に入ると、あくまで集団のために行動の意義を見出し、集団のために献身的に尽くし、集団からの承認を得ることだけが優先されるようになります。その時点で、もはや何が正常で何が異常なのか、自分は何のために、何をしているのかさえ見えなくなるのです。」
認知科学者「これは一般にも言えることですが、情報が多ければ多いほど、逆に限定した情報だけしか見なくなる傾向があるのです。」



感想
限界シリーズの第三弾。今回の本もかなり面白かったし、色々と考えさせられた。

特に、「自律的システム」と「分析的システム」について。「分かっていても対処出来ない」ってのは、本当にきついよな。知識や意志だけの問題じゃないんだな。ある程度は軽減できるとしても。元々、人はそういう造りになっている。これを念頭におけば、もっと人に優しくなれるかな?
だとしても、「意に沿わずに状況や人に従わされる」ってのは、僕が絶対に避けたいと思っているもの。僕自身の行動については、できるだけ合理性を追求していきたいもんだ。文中で認知科学者が指摘しているように、絶対に対処法はあるはず。それを克服するための能力を磨いていきたい。


「小集団の論理」について。彼らが組織に取り込まれるカラクリは、確かにそういうことなんだろう。だから、彼らの知識や理解の矛盾を突いたり、新たな情報を提示したりしても、更正させることができない。立ち返る人もいるだろうけど、それはまだ深くまで取り込まれていなかったってこと。そこでの人間関係が全てになってしまえば、戻ることは出来ない。やっぱり、人間関係にもある程度の多様性は必要。でも、広げすぎてもいけない。それは、情報にも選択肢にも当てはまるよな。


最後に。文中でもあったけど、この本のようなシンポジウムが色んな分野で起こるといいなあ。僕も、たまに自分の持っている知識が別の分野と繋がると嬉しくなるし。この本の中でもそれを感じられた。今の、知が細分化された状態は本当に勿体無い。分野を横断した知性の融合。是非とも成し遂げてほしいもんだ。まだ解明されていない最先端・限界の部分まで突き詰めなくても、今ある知識だけでも十分、何かを起こせそうだけど。