選択の科学
- 作者: シーナ・アイエンガー,櫻井 祐子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 単行本
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寛容は、固定観念をもとに異文化を批判することに比べればましだが、それでも重大な欠点がある。寛容は、対話を促し、批判的な内省を求めるというよりは、むしろ逃避を促すことが多いのだ。「勝手にしてくれ、俺も勝手にするから、互いに干渉し合うのはやめよう」。
たとえ文化の棲み分けが可能だとしても、やむを得ず交流が必要になった場合に、価値観に基づく対立はエスカレートしがちだ。
第一に、選択が無条件の善ではないことを、肝に銘じよう。また認知能力や許容量の制約上、複雑な選択を十分に検討できないことをわきまえ、つねに最良の選択肢を探し当てられないからと言って、自分を責めないこと。第二に、専門知識を増やして、認知能力や許容量の限界を押し広げ、選択から最小限の労力で最大限の効果を引き出すことだ。
選択は人生を切りひらく力になる。わたしたちは選択を行い、そして選択自身がわたしたちを形作る。選択の力を最大限に胃活用するには、その不確実性と矛盾を受け入れなくてはならない。
感想
著者は、選択に関する有名な「ジャムの実験」をした人。「ジャムの種類が多すぎると売上は逆に減る。選択肢が多くなりすぎると、人は判断できなくなってしまう」ってやつ。今まで色々な本で引用されているのを読んだことがあるし、これを基にして思考を形成している部分もあった。この本によって、またその認識を更新することができた。自分の思考を形成する読書っていいよね。
多すぎる選択肢は問題だけど、「選択」自体は大事だよな。動物園の動物は、選択できないストレスのために寿命が短いって話は面白い。現代に蔓延る無力感も、「選んでも何も変わらない」っていう経験の積み重ねから来ている部分も多そうだな。政治の世界なんかは特に。
寛容についての話はよく分かるな。僕も「人は人、自分は自分」という考えの持ち主だから、気をつけないと。それをしていい部分と、してはいけない部分の識別は出来ているつもりだけれど。対話が必要な時に、それを円滑に進め、相手にも納得させる技術や経験を持っていないことは問題だ。磨いていかないと。
色々な研究の知見からの考察がちりばめられており、その関連性を楽しむこともできた。「最初の2秒のなんとなくが正しい」「幸福の計算式」「予想どおりに不合理」