40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

坂の上の雲 5

坂の上の雲 <新装版> 五

坂の上の雲 <新装版> 五

日英同盟は単に日本にとって戦略外交上のプラスをあたえただけでなく、このパートナーから公正で豊富な情報があたえられる結果になり、このため日露戦争中、東京の政府はその位置が極東にあるにもかかわらず、国際情勢の判断をほとんど誤ることがないという望外の利益をえた。


新聞の水準は、その国の民度と国力の反映であろう。要するに日本では軍隊こそ近代的に整備したが、民衆が国際的常識においてまったく欠けていたという点で、なまなかな植民地の住民よりもはるかに後進的であった。


乃木には統率力はあったが、近代戦の作戦能力となればとてもそういう材ではなく、すぐれた参謀長が必要であった。乃木はたしかに仁者であり、武士の情に動かされるという点では美的行動者であったが、しかし半面、戦争をどれだけ損害すくなく勝利へ運営してゆくかということについて、どこか神経の欠落したところがあった。


奉天会戦は、どうみてもロシア軍が負けるべき戦いではなかった。が、作戦で敗れた。それも徹頭徹尾、作戦で惨敗した。ロシア軍の敗因は、ただ一人の人間に起因している。クロパトキンの個性と能力である。国家であれ、大軍団であれ、また他の集団であれ、それらが大躓きに躓くときは、その遠因近因ともに複雑で、一人や二人の高級責任者の能力や失策に帰納されてしまうような単純なものではなく、無数の原因の足し算なり掛け算からその結果がうまれている。が、奉天会戦にかぎってはただひとりのクロパトキンに理由がもとめられる。



感想
この巻では、明石によるロシアの革命扇動活動と、奉天会戦について描かれている。
あと、日本の同盟国であるイギリスの貢献についても。日本単独で戦わされたのかと思っていたが、側面援護はしっかりあったんだな。バルチック艦隊の補給を妨害したり、日本に国際情勢の情報を流したり。とはいえ、イギリスが小部隊でも出してくれていたら、戦況もより容易になっていたのかもしれないけどさ。うまく連動できたかは分からないけど。


乃木の資質について。仁者ではあったのかもしれないけど、トップに求められるのはやっぱり第一に能力だよな。自身では足りないと思うのなら、他者によってそれをしっかり補完しろよ。それも含めての能力。いくら人望があっても、無能者に付いていっては破滅する。下の者にとってはいい迷惑。それによって多数が死んだわけだから、迷惑どころの話ではない。命を預かる人間が、それに無頓着になっちゃいけないだろう。

まあ、悲劇の度合いはロシアの方が上。乃木は将軍の立場だったから、犠牲になったのはその配下の一軍で済む。でも、ロシアの場合は、総司令官が大失態をやらかしちゃったからな。改めて、トップの責任重大さを思う。今は個人の時代とか言われているけれど、やっぱりトップが優れている企業は伸びるもんな。

翻って、今の日本を考えるに。軍隊という単位を超え、日本国が沈没してしまうのでは?まあ、政治ってのは戦争と違って、トップに権力が集中するもんじゃないのかもしれないけど。それに、新聞の水準についての記述もあったけれど、今の日本の民度もその程度ってことなのかもしれないな。