40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

蟹工船

小林多喜二 蟹工船

小林多喜二 蟹工船

余った人間はドシドシ土地からハネ飛ばされて、市に流れ出てきた。彼等は、身寄りのない雪の北海道で「越年」するために、自分の身体を手鼻位の値で「売らなければならない。」


内地では、労働者が「横平」になって無理がきかなくなり、市場も大体開拓されつくして、行詰ってくると、資本家は「北海道・樺太へ!」鉤爪をのばした。其処では、彼等は朝鮮や、台湾の殖民地と同じように、面白い程無茶な「虐使」が出来た。


解題
ここに登場するのは、機械部品としてのプロレタリアートだ。彼らには、名前も、個性も、容貌も、内面心理もない。作者によって剥奪されている。記号だ。現実世界で決定的に非人間化されている集団の真実を形象化するために、作者は決然として、個人としてのリアリティのない<人間>を描くことを選んだ。



感想
昨日アップした本は、「現代の蟹工船」とか言われているらしい。蟹工船って、タイトルだけは聞いたことあるけれど、読んだことはなかった。そういうわけで、いい機会だし、過去と現代との比較にもなるだろうと思い、読んでみることにした。こういうところからの繋がりは大事にしていきたいからね。色々と関連付け、広げていきたいし。


読み終わってみて。まあ、過去にこういう時代があったんだよな。悲惨と言うしかない。確かに、両者に共通点はあるな。他に選択肢がない人間が集まっているところとか、人材が資本主義のために使い捨てにされているところとか。


人類の進歩のなさ、人間の本質なんかを見せ付けられる思いもある。でも、それでもやはり、現代の方がマシなんだろう。そりゃあ、一時期の成長期に比べたら、退化している面もあるのかもしれないけど。なかなか進まない歩みだとしても、それでも前進はしている。使い捨てで未来がないとはいえ、命まで取られることはない。穴だらけかもしれないけど、セーフティーネットだって用意されている。それに、集めようと思えばいくらでも情報収集をすることができる。情報発信だってできるし。


立ち上がろうと思えば、いくらだって立ち上がれる環境はある。それを、人類は長い時間をかけて積み上げてきた。もちろん、人によって様々な事情があり、底辺に甘んじざるを得ないこともあるんだろう。その世界を実際に味わったわけではない、上から目線の僕では本当のところは分からないのかもしれない。でも、自分を卑下し、諦観することさえなければ、誰だって這い上がれると思っている。


それは、底辺だけでなく、どんなレベルの人にも当てはまるだろう。今後の世界は問題山積みで、成長期を謳歌した世代のような幸福な未来は描けないと言う。でもそんなの関係なく、僕は未来は明るいと思っている。そう思えるってだけでも、既に僕は幸福なんだろうけどね。