政治家の殺し方
- 作者: 中田宏
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2011/10/26
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 298回
- この商品を含むブログ (50件) を見る
国政の場合は、与野党が論戦を繰り広げるなかで、ガセネタの真偽が明らかになり、嘘を言った議員はそれなりの責任を取ることになる。ところが、地方議会にはそういう自浄作用がない。与党と野党がはっきりと分かれる国政と違って、地方自治体では首長と議員をそれぞれ直接選挙で選ぶ二元代表制をとっているからだ。そのため、ただでさえ議員同士は仲間意識があり、オール与党となれば、なおさら議員同士が厳しく監視し合う機能が働かず、おかしな言動が是正されない。これでは地方自治に未来はない。
私は政治が嫌いだ。もし、日本を任せられるような信頼できる政治家が何人もいて、政治に対する疑問が少なければ、私は政治家をめざさなかった。いまの政治に満足できないから、自分が政治家になったのだ。政治に失望していたから、自分が政治家をめざしたのだ。
自分が政治家になって痛感するのは、「就職活動としての政治」が多すぎるということだ。政治家という立場を職業として考え、政治家になるための就職活動になってしまっている。落選したら生活が成り立たないから、しがみつく。だから、耳障りなことは言わない。有権者に「してあげます」とは言っても、「自分でやるべきだ」とは言えない。
いまさえよければ、自分さえよければ、という考えが日本をダメにしているのだと思う。
我が国を立て直す、何よりの基本は自立することに尽きる。個人も会社も地方も、自分でできることは自分でする。その精神が根本にあった上で、できないことを補完する社会を目指したい。このままでは、みんなで食い合い、潰し合いをするような社会になってしまう。「タダだから使う」「くれるならもらう」。今の日本はまさにそんな状態になっていると思う。
感想
「Chikirinの日記」で紹介されており、興味を持って読んだ本。
もともと、政治にはあまり思い入れがなかったんだよな。いつまでも足の引っ張り合い、批判のための批判・反対のための反対ばかりをやっていて、何も変えられない印象だし。致命的な間違いを犯さず、日々の暮らしが混乱することがないようにだけ運営してくれていればいいよ、と。変革なんて期待したって失望するだけ。それだと根本的な問題を解決できず、ゆっくり衰退していくだけなんだろうけど。でも、本当の危機に直面しないと日本国民は目覚めない、ならば行き着くところまで行けばいいじゃないか、という半ば諦め・やけっぱちの心境。まあ、そんな中でも自分は何とか上手くやってやろう、って考えてはいるけど。楽観主義でもあるし。
そんなわけで、政治にはあまり触れないできた。ただ最近、これだけみんな政治の停滞を分かっているのに、改革が進まない背景にはどういう力学が働いているんだろう、っていう興味は湧いてくるようになった。様々な人の思惑が渦巻いているんだろう。それを理解するのは面白そう。そういうスタンスで、これからちょっと政治を追っていこうと思っている。
というわけでこの本。色々なことが知れてすごく興味深かった。反対派の手口とか、地方議会の仕組みとか、マスコミの体質、役所の体質、とか。
この本で描かれていた、「週刊現代」のスキャンダル記事は酷いな。根も葉もないこんな記事が何週にもわたって載るってのはどういうことなんだろう。そこに罰則がないのはおかしすぎる。マスコミの良心なんかにはいまさら期待していないけど。そういう醜聞に興味を持ち、読む人が多いからこそそれがくり返されるんだろう。でも、それがウソだと分かっても、そういう信頼度の低い媒体を支持し続ける心境が分からない。みんなが読むのをやめれば廃刊せざるを得ないんだし、そうなれば記事の信頼度を上げるために頑張るだろうに。
あと、間違った記事を載せた時の対応方法も変えたらいいんじゃない?小さな謝罪記事を載せるだけで終わらせるんじゃなく。偽記事に割いた分の紙面と同じ量だけ、謝罪記事に費やすように強制するとか。もしくは、攻撃を受けた人にそのスペースを渡し、好きに使ってもらうとか。マスコミだけに限らないけど、人の常識や良心に頼っていては解決しないことは多い。それを防ぐための仕組みを整えなくちゃ。まあ、それが出来れば苦労はしないのか。
著者の、政治家を目指した理由はすごいね。政治が嫌いだから、失望していたから、自分がなろうと思ったって。僕も政治家に全然期待していないけど、ならば代わってやってやろうとは思わないからな。その代わり、彼らのせいにして現状を嘆くつもりもない。消極的にしたって、行動しないってことは、現状を認めたってことだから。自分の人生を他人に預けるつもりはない。行動しないこと自体が、僕の選択。その結果受ける不利益は、甘んじて受け入れる。少なくとも自立してる考え方ではあるのかもしれないけど、著者が戒める"自分さえよければ"という考え方でもあるんだろうな。部分最適ではあっても、全体最適ではないから。
そんな僕だから、実際に行動してくれる著者みたいな人はありがたい。自分で行動しない分、そういう人は応援しないとな。話題の大阪市長・橋下さんにしても。すんなり進むことはないんだろうけど、ならばどういう障害が発生するのか、注目していきたい。