40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

なぜ、身体的な特徴や運動能力の遺伝が当然のこととされていて、知能や性格の遺伝ははげしい抵抗にあうのだろうか。じつはこれは、「遺伝」が科学ではなく政治問題だからだ。知能の差は、就職の機会や収入を通じてすべてのひとに大きな影響を与える。知能が遺伝で決まるというのは不平等を容認するのと同じことになる。誰だってこんなことは認めたくないから、都合の悪いことはすべて環境のせいにしようとする。
「知能の70%が遺伝で決まる」とした研究は、いまやその正しさが科学的に証明されているのだ。


自己啓発は、ひとがみな無限の能力を持っていて、知能や性格が教育によって開発できることを前提にしている。それに対して行動遺伝学は、遺伝的な影響を教育で変えることはできないという大量のデータを積み上げている。適性に欠けた能力は学習や訓練では向上しない。努力に意味はない。


ぼくたちは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない。進化心理学では、ぼくたちの脳は狩猟採集の石器時代に最適化されていると考える。社会環境はものすごい勢いで変わっていくけれど、進化のスピードはおそろしくゆっくりだ。その結果ぼくたちは、石器時代のこころを持ったまま、情報が光速で飛び交う超近代都市のアスファルトジャングルで暮らさざるを得なくなった。
ぼくたちの不幸は、ひとがヒトであるということにあらかじめ組み込まれているのだ。


生存のためには、食べ物が必要だ。ヒトの歴史の大半を占める狩猟採集時代では飢えは日常で、食べることに貪欲な個体だけが生き残った。彼らの直系の子孫であるぼくたちが、食に強い快感や幸福を感じるのはそのためだ。
ヒトは有性生殖だから、繁殖のためには異性との性交が不可欠だ。子孫を後世に残すのに成功したのは、異性を獲得する強い衝動を持ち、子どもを産み育てた個体だけだ。だからぼくたちは、性や愛を激しく求める。



感想
「(日本人)」が面白かったので、著者の別の本を読んでみた。人間の性向や欲求を、進化の歴史から説明する「進化心理学」の考え方は結構面白い。かなり納得させられるものがあるし。人がネガティブな気持ちを抱きがちなのは、そうすることによって危険を避け、生存確率を上げるため。というか、そういう個体でないと生き残れなかった、ってこと。
食べることや愛することも同じ。別にそれらの価値観を否定はしないけれど、「命を繋ぐ」という本能に支配されているってのは後味のいいものではないな。そうしてきたからこそ、今こうして実在しているんだ、ってのは分かっているんだけど。支配や強制ってのが大嫌いなもんで。まあ、そうすることで幸せを感じられるってんなら、無理に逆らうつもりはないんだけどさ。本能と現代に生きることとの間に齟齬が生じているのならば、無駄に苦しむつもりはない。


「自分に適性のない分野での努力に意味はない」ってのは、まあそうなんだろうけど。適性のない分野が、この世界で評価されるために重要な分野だったら悲惨だなあ。無駄だと分かりつつも努力せざるを得ないとか。無駄な努力が嫌いな僕だけど、それが、そうやって切り捨てても問題ない分野だったってのは有難いことだよな。


努力が必ずしも報われるわけではないこの世界で生き残る方法として著者が提示するのは、自分がトップになれるところを見つけること。「自由で効率的な情報社会の到来は、すべてのひとに自分の得意な分野で評判を獲得する可能性を開いた」と言う。まあ理屈としてはそうなんだけどね。情報化によって、それを探す手間は省けるようになるとしても、そこまでピンポイントに細分化された世界を人々は望むのかなあ。所属欲求を満たすためには、それなりの大きさが必要のような気もする。そもそも、情報化社会に親しむこと自体、適性があるようにも思うし。まあ、実際にどうなるのかは分からないけど。個人的には楽しみだな。


最後に、評価社会について。「不都合な評価を押付けられたら、さっさとリセットして自分を高く評価してくれる場所に移ればいい」というけれど、今後ますます情報化が進む中で、本当にリセットなんて出来るんだろうか。ハンドルネームでの活動であれば改名すればいいけれど、Facebookのように実名で悪評が流れてしまったら、ずっとそれを背負わされることになるんじゃないの?今以上のムラ社会が到来する恐れもありそうだな。