40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

ゲーテの警告−日本を滅ぼす「B層」の正体

ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体 (講談社+α新書)

ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体 (講談社+α新書)

世の中には低レベルなコンテンツがあふれています。それはなぜか?頭のいい人間がB層を対象に商品をつくっているからです。朝日新聞社の社員はA層の住人です。彼らはバカではないので、戦後民主主義が幻想であることも、19世紀に近代的諸価値を基礎づけることが不可能になったことにも気づいています。しかし、B層向けの「世界観」を提示し、それを量産しなければならない。それがビジネスだからです。


一流とは何でしょうか?ゲーテは「一流とは歴史を背負うことだ」と言います。これまで「一流」とされてきたものを、そのまま一流と認めることです。一流とは、歴史的、社会的、文化的なものなので、個々人がどう感じるかは実はあまり関係ありません。一流のもの、偉大なものは、一朝一夕には生まれません。一流のものは、個人ではなく時代に属します。


民衆が第一権力になれば、政治は必ず腐敗します。民衆は世論に動かされる。そこで活躍するのは、今も昔もデマゴーグです。よって、古代の賢人たちは、次の結論を引き出します。政治に移ろいやすい「民意」を反映させるのは危険であると。


政治に直接民意を反映させてはいけないのです。政治家がやるべきことは「民主主義の原点」から、社会・共同体を守ることです。そして自由な言論の場である議会を守り、プロの見地から立法を行うことです。増税社会福祉が必要ならやればいいし、不必要ならやらなければいい。それはプロとして判断すべきことです。
民意を尊重する医者がいたら嫌でしょう。手術が必要かどうかは、患者ではなくプロである医者が決めること。



感想
2年ぶりくらいに適菜さんの本を読んだ。通算四冊目。でも、適菜さんの言説は、iPhoneで読んでいる産経新聞にたまに載るんで、その際には目を通していた。「相変わらずの調子だなあ」と思いながら。
今回、「現代ビジネス」のネット版で著書が紹介されているのを読み、久しぶりに読んでみることにした。本当は「日本をダメにしたB層の研究」を読みたかったんだけど、図書館ではかなりの人気で当分読めそうに無いので、代わりに今回の本を。本屋で流し読みした限りでは、どちらも似たような内容だったかな。


Amazonの評価でも、適菜さんの本には批判も多い。対象をばっさり斬るからな。しかも、一方の側からの一面的な意見なんで、色々と反論したくなる気持ちも分かる。僕も、最近売れた本についての、『「ハーバード」「東京大学」「ニーチェ」というブランドが重要なのであって、著者はなんでもいいんです。』なんて主張には、「あんたの本だってニーチェやらゲーテやら冠して、バカにしているB層を対象にしているじゃないか!」って突っ込んでしまった。


でもまあ、そういうスタイルでこそ言えること、こちらに響くことってのもある。大体、自分に出来ていることしか言えないんだったら、何にも言えなくなっちゃうからな。読んでいて色々納得させられる部分もあったし、自分自身に当てはまって耳に痛い部分もあった。どんなに偏った意見だったとしても、そこに得るものがあるのならば受け入れる。バランスはこちらでとる。


民主主義の危険についての話は、本当にその通りだよな。本「日本人のための憲法原論」でも、民主主義の危険が説かれていたし。でも、民主主義にみられる平等の精神があったからこそ、こうして資本主義が発展し、文明が劇的に発達した。どんな物事にも一長一短がある。良い所だけ取ることはできない。それを考慮に入れ、対応していかないと。


適菜さんが言うように、医療をプロに任せるように、政治もプロに任せられたらいいんだけど。任せられるような人はなかなかいないし、大衆側もそれを判断できないし。ならばと自分が前面に出て、口を出す。「やらない後悔より、やる後悔」ってやつ。だけど、同じ「後悔」でもレベル差ってのはあるからな。致命的なことにならないといいけど。
まずは、医者と同じように、政治家になるためのハードルを高くすることだな。試験を実施し、研修も行う。そうしたら最低限、実力のない、人気だけの政治家はいなくなるのに。庶民に近い感覚なんてのは、それをクリアしてから主張してくれ。でもまあ、頭が良いことや知識があることが、有能な政治家に繋がるわけでもないんだけど。