大衆の反逆
- 作者: オルテガ,Jos´e Ortega y Gasset,寺田和夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/02/01
- メディア: 新書
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今日の生は過去に指針を求めることはできない。自分自身の運命を新たに見つけ出さねばならないのである。過去は、われわれがなさねばならないことを教えてくれないが、しかし、われわれが避けねばならないことは教えてくれる。
前もって意見を作りあげる努力をしないで、その問題について意見を持つ権利があると信じていることからして、私が「反逆的大衆」と呼んだところの、人間としてのばかげたあり方に属していることを典型的に表明しているのだ。それこそまさしく、閉鎖的、密室的な魂を持つということである。この場合は、知的閉鎖性といえるだろう。賢者は、自分がもう少しで愚者になり下がろうとしている危険をたえず感じている。そのため彼は、身近に迫っている愚劣さから逃れようと努力するのであり、その努力のうちにこそ英知があるのだ。
明晰な頭脳の持ち主とは、幻影的な「思想」をふり捨て、生を直視し、生にあってはいっさいが問題を含むことを認め、自己を迷える者と自覚する者である。自分を迷える者と真に自覚していない者は必然的に自己を見失う。つまり、けっして自己を見いだすこともなければ、絶対に真の現実に出会うこともないのである。
感想
「座右の古典」で紹介されていた本。この本は1930年に刊行された。19世紀に成し遂げられた繁栄・安定に安住し、考えることを止め、得た権利を主張するばかりになった「大衆」について言及している。安定が脅かされていることに不安・閉塞感・無力感を感じている大衆。それでも、何も行動せず、要求するばかりの大衆。
これは、現代にもそのまま当てはまる状況だね。高度経済成長・一億総中流の時代が終わり、グローバル化によって先が見えない激動期に差し掛かっている今とそっくり。まさに、「歴史は繰り返す」。歴史・古典を学ぶ意義も、そこにあるよね。「過去は、われわれが避けねばならないことは教えてくれる」。同じ過ちを犯しても仕方ない。しっかり学び、反映させていきたい。
「予測しがたいということ、地平線がつねにあらゆる可能性に向かって開かれていること、そういうものこそが紛れもない生であり、生の真の充実である」とも言う。
これもその通りだね。僕も安定を望む人間だけど、それを達成するために行動し備えていることにこそ、生を、喜びを感じているんだろうな。自分の生を導いている掌握感、達成感。リスクやハプニングを敬遠するのならば、そもそも一人旅にだって行かないだろう。
それに、絶対の安定なんて無い。それを理解していれば、現実に目を逸らすなんてことはしない。安定を脅かす要素に敏感になり、備え・対処を怠らない。そうしないと、相対的な安定も失ってしまうからな。今後もこの態度はちゃんと保っていこう。まあ、僕の人生の目的からしても、言うまでもないことだけど。