ゲーテとの対話 中・下
- 作者: エッカーマン,山下肇
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1969/12/16
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- 作者: エッカーマン,山下肇
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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「人間というのは単純なものだ。たとえ、どんなに豊かで、多様で、測りがたい人間でも、その人間のいろんな状況がつくっている軌道など、たちどころに一巡されてしまうものさ。」
「とにかくドイツ人というのは、奇妙な人間だ!−彼らはどんなものにも深遠な思想や理念を探しもとめ、それをいたるところにもちこんでは、そのおかげで人生を不当に重苦しいものにしている。−さあ、もういいかげんに勇を奮って、いろんな印象に熱中してみたらどうかね。手放しで楽しんだり、感激したり、奮起させられたり、また教えに耳を傾けたり、何か偉大なものへ情熱を燃やして、勇気づけられたらどうかね。しかし、抽象的な思想や理念でないと一切が空しい、などと思いこんでしまってはいけないのだ!」
「君の意見に」とゲーテは答えた、「反対するつもりはない。けれども、私がさっき言ったことも、それはそれで正しいのだ。してみれば、真理というのは、その光を一方だけではなく多くの方向に放つダイヤモンドにも似ているといえよう。」
今や、彼はあと数年もすれば80歳に手が届こうとしている。しかし、探求や体験に飽きることはあるまい。どんな方面においても、彼はとどまることを知らない。彼は、つねに前へ、前へと進もうとする。たえず学びに学んでいる。そして、まさにそのことによって、永遠にいつも変らぬ青春の人であることを示してくれるのだ。
感想
上巻に引き続き、中・下巻も読み終えた。ゲーテとの日々を綴ったエッカーマンの日記を、時系列に沿って載せているので、話題も登場人物もどんどん変わるし、テーマに沿って主張を展開・構築するタイプの本ではない。日々の会話の中のふとしたきっかけで、ゲーテの思想がこぼれ落ちてくるって感じ。それが、一体どのタイミングで飛び出すのか分からず、時に冗長とも思える展開に付き合う必要があった。もちろん、そういう読み方をする本じゃないってのは分かっているんだけどさ。
こういった形式のおかげで、ゲーテの生活空間にどっぷり浸かることができた。それにしても、ゲーテの好奇心や探究心は凄いね。エッカーマンも指摘しているけれど、80歳前後という年齢に至ってなお、その気持ちを失っていないんだから。僕も色々なことを知るのは好きだけど、とてもここまでは真似できない。何かを成し遂げる人の突き抜けっぷりに圧倒されちゃったよ。
ゲーテが取り上げる同時代人の作品や、ゲーテ自身の作品にも興味が湧いた。今さら「若きウェルテルの悩み」を読んでも響かないかもしれないけど、試してみたい。あと、「ファウスト」も是非読んでみたい。手っ取り早く映像でと、アレクサンドル・ソクーロフ監督作のファウストを見たら、監督の解釈・アレンジが凄すぎて失敗した。やっぱり本で読まないとダメだな。