40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

動物化するポストモダン

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

筆者は、決して、オタク系文化の出現が日本独自の現象だと考えていない。それはむしろ、20世紀半ばに始まった文化のポストモダン化という大きな流れの、日本における支流のひとつだと捉えるべきだと考えている。だからこそ、オタクたちの作品は国境を越えて支持されているのだ。


90年代のオタクたちは一般に、80年代に比べ、作品世界のデータそのものには固執するものの、それが伝えるメッセージや意味に対してきわめて無関心である。逆に90年代には、原作の物語とは無関係に、その断片であるイラストや設定だけが単独で消費され、その断片に向けて消費者が自分で勝手に感情移入を強めていく、という別のタイプの消費行動が台頭してきた。この新たな消費行動は、オタクたち自身によって「キャラ萌え」と呼ばれている。
そこではオタクたちは、物語やメッセージなどほとんど関係なしに、作品の背後にある情報だけを淡々と消費している。


いまや、個々の物語が登場人物を生み出すのではなく、逆に、登場人物の設定がまず先にあり、そのうえに物語を含めた作品や企画を展開させる戦略が一般化している。そしてこのような状況では、必然的に、個々の作品の完成度よりもキャラクターの魅力のほうが重要になるし、またその魅力を高めるためのノウハウも急速に蓄積されることになる。


データベース消費のなかにいるオタクたちは、ひとたびある作品に捕まれば、あとは関連商品と二次創作を無限に消費してくれる。彼らが前にしているデータベース型世界では、その情熱を鎮めるための「大きな物語」が存在しないからだ。



感想
ニコ生で、岡田斗司夫さんとの対談を見て、興味を持ったので読んでみた。本書は、東さんの代表作とのこと。2001年に発売された、哲学者・思想家の立場から見たオタク論。僕は両者にそれなりに親しみは感じているけれど、それほど詳しいわけじゃないからな。本作が、オタクの本質を突いているのかどうかは分からない。Amazonでも程々の評価だったしね。ただ、自分自身に当てはまる部分や共感できる部分もあり、色々と考えるきっかけになったのは楽しかった。


世の中に溢れている作品について。これは分かるなあ。そこで伝えられるメッセージは既に陳腐化していて、「もう分かってますよ」ってなっちゃってる。確かにまあ、本当に大切なことってのは、そんなにたくさんあるわけじゃないからな。物事の本質を突いた名言も、そのうち出尽くす。そしたら後は、それをどうやって伝えるか、って部分に凝る以外、やりようがなくなる。

僕自身これまで、作品の細かい設定は重視せず、そこで展開されるシナリオこそを重視してきた。シナリオ至上主義。そこが良ければ他には大体目をつぶる。でも、シナリオに含まれるメッセージが大事なんだとしたら、これほど新しいものばかりを求める必要はないんだよね。結局はシナリオも、作品を包む設定の一つ。同じことだったんだな。


まあ、この傾向はオタク作品に限らず、だけど。小説でもドラマでも、音楽でも舞台でも。およそ全ての娯楽作品に当てはまる。結局、同じもので我慢できないのが人間なんだろう。著者が主張するほど、今の時代特有ってわけでもない。ゲーテも言うように、結局は「新奇なもの」しか求めてないんだよね。ただ、最近は色んな作品が溢れるように誕生しており、その傾向がより鮮明に現われているってことなんだろう。ネット社会・データ社会になって、より簡便に参照できるようになったし。


結構面白かったんで、また別の本も読んでみたい。