40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

幸福論 一

幸福論 (第1部) (岩波文庫)

幸福論 (第1部) (岩波文庫)

早くから自分自身をこえて、自分だけのために生活しないということが、青年を向上させ、強健にして、事に屈せぬ力を与える唯一の道である。利己主義は常に一つの弱点であり、ただかずかずの弱点を生みだすのみである。


人は哲学の道でも、宗教の道でも、多くの指針を必要としないものである。それよりも、真に大切なことは、自分のもつ知識を本当に信じて、決然として実行に移すことである。真に傑出した人物が人類の恩人となりえたのは、真の哲学もしくは宗教のごくわずかな、しかし確固たる原理のおかげである。
普通にひとが哲学とか、宗教とか呼んでいるものは総体に、たいがいの人にとっては飾りであり、せいぜいのところ、その実践生活になんら直接に影響を与えることのない知識にすぎない。


ある程度孤独を愛することは、静かな精神の発展のためにも、また、およそ真実の幸福のためにも、絶対に必要である。人生のいかなる偶然性にも左右されることなく、そして実際に到達することのできる幸福は、ある大きな思想に生きて、それのためにたゆまず着実な仕事をつづける生活のうちに見出されるものだ。


結局大切なのは、なんらかの財宝を所有することではなく、これを所有することによって人が幸福を感ずるかどうかである。


適度の心配、そしてそれから解放されること、これは人間の幸福のきわめて重要な部分をなすものである。人生において本当に堪えがたいのは、悪天候の連続ではなく、かえって雲のない日の連続である。



感想
座右の古典」で紹介されていた本。「幸福」についてはこれまでにも色々と考えてきたことなので、とても興味深く読むことができた。やっぱり読み継がれる古典には、それにふさわしい重みがあるね。


幸福の手段として提示する二つの思想。ストア哲学キリスト教。著者はその両者に親しんでおり、その利点や両者の違いを説明してくれる。まあ、著者はキリスト教徒で、結局はそっちに軍配を上げるわけだけど。
ストア哲学については僕も親しんでいる思想なんで、詳しく解説してくれて勉強になった。ストア哲学が、消極的な思想だということだけでなく、孤立にも繋がりやすいってのは十分に注意していないと。


宗教はまず、神を心で受け入れるところから始まる。その上で初めて、頭でも受け入れられるようになる。でもそれって、僕から言わせれば、認知的不協和を解消するために自分で自分の脳を変質させているだけだろう、と。まあ、それについて争うつもりも、相手の意見を翻させるつもりもないけどさ。


それに、ブームのような一過性のものではない、骨太な真理体系に入るほうが、人の精神衛生にとってはいいんだろうな。ブームに振り回されているような人にとっては。
とはいえ人は誰でも、結局は多かれ少なかれ、自動的に行動してしまう部分があるし、他者の言いなりになる部分がある。何でもかんでも自分で考えて検証するには、時間も体力も足りないから。それを受け入れた上で、どこに譲れない領域を定めるか。自動的ではない、自分で考えて決める領域とするか。人の生き方ってのは、それによって様々に変わっていくんだろう。


大事な部分を見極め、そこは譲ることなく行動することで、自分の追い求める幸福を実現していきたい。