デカメロン
- 作者: ボッカッチョ,平川祐弘
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/10/11
- メディア: 単行本
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ダンテが『神曲』百歌を書いたからこそボッカッチョは『デカメロン』百話を書き得た。ダンテがボッカッチョに影響を与えたというよりも、ダンテの『神曲』という作品が存在することによって開かれた視界の中でボッカッチョの『デカメロン』は生まれた、といってよい面があるのである。刺戟され、挑発され、触発された関係なのである。ダンテに『神曲』があったからこそボッカッチョには『人曲』ともいうべき『デカメロン』があった。
ダンテはキリスト教西洋の最高の詩人と呼ばれる。それに引き続くボッカッチョはヨーロッパ最大の物語作家と呼ばれる。
感想
前に平川さん訳の「神曲」を読んだけれど、その縁で本書も読んでみた。訳者によると、「神曲」があったからこそ「デカメロン」が生まれたとのこと。その繋がりを追ってみたかったし、「デカメロン」自体もタイトルだけは聞いたことがあっても中身は知らなかったからね。
テーマに沿った、100の短編集。なるほど、こういう形式だったのか。特に各話に繋がりがあるわけではない、読み切りスタイルなため、どこから読んでも構わない。個人的には、短編よりも長編を読みたいんだけどね。それぞれ面白いは面白いんだけど、もっと積み重ねとか余韻が欲しいというか。まあ、こういうのも立派な一つのジャンルだってのは分かっているんだけど。たまにはいいか。
ダンテの「キリスト教至上主義」とは違う、現実的で寛容な立ち位置には共感した。人間の業・本質を面白おかしく語りつつ、それらを受け容れている。ダンテの統制よりも、ボッカッチョの自由。まあ、心情的にはボッカッチョに共感しつつ、自分の生き方自体はストイックなダンテに近いような気もするけどね。だからこその憧れ・目標、なのかな。