40歳アリリタ(早期退職)達成者のブログ

メインは書評(自分語り)。色々と経験する中で自分の生き方が固まり、2014/11/02の記事を集大成に方針確定。2020年3月末、40歳にてアリリタ達成!

聖なる怠け者の冒険

聖なる怠け者の冒険

聖なる怠け者の冒険

「退屈しのぎ」とは、なんと奥の深い言葉だろう。つねづね小和田君は、もっと長い休暇が欲しいと願っていた。一日や二日の休暇に何の意味があろうか。人生全体から見れば誤差の範囲だ。いたずらに物足りなさを感じるばかりで、退屈の底まで行きつけない。退屈で退屈でイヤになるぐらい怠けなければ、働く意欲なんて湧くもんか。
「アア僕はもう、有意義なことは何もしないんだ」


「うかうかしていたら、あっという間に月曜日がやってくるんだぞ」恩田先輩は怯えたように身を震わせた。
「だからこそ週末を満喫するべきなの」と桃木さんは言った。
そうすると、所長が「まあまあ」と言って二人を遮った。「お二人とも、少し落ち着きなさい。たしかに仰る通りです。いずれ必ず月曜日は来る。しかし−」
「しかし明日は日曜日ですよ、皆さん」
「イヤになるぐらい怠けるがいい」



感想
森見さんの本、8冊目。これまで森見さんの作品はすごく楽しんで読んでこれたわけだけど。今作は、これまでよりはちょっとばかり入り込めなかったかなあ。


いつもながらの雰囲気はあるし、キャラも出てくる。ただ、主要キャラである「ぽんぽこ仮面」がちょっと異質だったのかなあ。これまでの作品に登場するキャラは、自分の生き方に満足し、周りなんて気にせずその道を突き進んでいる。その結果何が起ころうと、それを平然と受け入れ、笑い飛ばしている、というか。今作でも、彼以外はそんな感じ。
「ぽんぽこ仮面」も信念あるキャラだけど、今までになく頑張りすぎてる奴なんだよね。努力と結果のギャップに苦しんでいて、その姿を哀れに感じてしまう。現実世界にそのまま通ずる姿に、ちょっと冷静になってしまったというか、目が醒めてしまったというか。まあ、最後には吹っ切ったようだけど。


こういうふうに、ぴりりと辛くて、最後には爽やかな風が吹くような作品も、たまにはいいかもね。