聖なる怠け者の冒険
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/05/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (68件) を見る
「アア僕はもう、有意義なことは何もしないんだ」
「うかうかしていたら、あっという間に月曜日がやってくるんだぞ」恩田先輩は怯えたように身を震わせた。
「だからこそ週末を満喫するべきなの」と桃木さんは言った。
そうすると、所長が「まあまあ」と言って二人を遮った。「お二人とも、少し落ち着きなさい。たしかに仰る通りです。いずれ必ず月曜日は来る。しかし−」
「しかし明日は日曜日ですよ、皆さん」
「イヤになるぐらい怠けるがいい」
感想
森見さんの本、8冊目。これまで森見さんの作品はすごく楽しんで読んでこれたわけだけど。今作は、これまでよりはちょっとばかり入り込めなかったかなあ。
いつもながらの雰囲気はあるし、キャラも出てくる。ただ、主要キャラである「ぽんぽこ仮面」がちょっと異質だったのかなあ。これまでの作品に登場するキャラは、自分の生き方に満足し、周りなんて気にせずその道を突き進んでいる。その結果何が起ころうと、それを平然と受け入れ、笑い飛ばしている、というか。今作でも、彼以外はそんな感じ。
「ぽんぽこ仮面」も信念あるキャラだけど、今までになく頑張りすぎてる奴なんだよね。努力と結果のギャップに苦しんでいて、その姿を哀れに感じてしまう。現実世界にそのまま通ずる姿に、ちょっと冷静になってしまったというか、目が醒めてしまったというか。まあ、最後には吹っ切ったようだけど。
こういうふうに、ぴりりと辛くて、最後には爽やかな風が吹くような作品も、たまにはいいかもね。