沖縄文化論
- 作者: 岡本太郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/06/18
- メディア: 文庫
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私は今まで、エジプトの神殿、アクロポリス、出雲大社が神聖だと思っていた。しかし何か違うのではないか。それは人間の意志と力にあふれた表情、いわば芸術の感動ではなかったか。それを通して、背後にある恐ろしい世界、その迫力みたいなものに圧倒される。権勢をバックにした豪壮さ、洗練を極めた形式美。つまり力と美に対する驚嘆であり、アドミレーションである。
沖縄の御嶽でつき動かされた感動はまったく異質だ。なに一つ、もの、形としてこちらを圧してくるものはないのだ。だから逆にこちらから全霊をもって見えない世界によびかける。神聖感はひどく身近に、強烈だ。静かな恍惚感として、それは肌にしみとおる。神は自分のまわりにみちみちている。静寂の中にほとばしる清冽な生命の、その流れの中にともにある。あるいは、いま踏んで行く靴の下に、いるかもしれない。ふと私はそんな空想にとらわれていた。
感想
沖縄計画、第6弾。本当はこれ以外にもいくつか本を読んでいるし、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」とか、沖縄を舞台にした映画なんかも一通り触れたりはしたんだけど。本に関しては重複する部分も多かったし、あえて追加して紹介しなくてもいいかな、と。映像モノについても、それなりのイメージは得られたけど、形として文章化しにくいんで。
沖縄旅行も目前に迫ってきたため、今回紹介するので最後。この本の著者は岡本太郎。太陽の塔を作った芸術家であることと、「芸術は爆発だ」という言葉くらいしか知らなかったんだけど、Amazonでの評判がいいみたいだったんで読んでみた。
岡本太郎はフランスのソルボンヌ大学で哲学・社会学・民族学を学んだとのこと。そのベースがあってこその本書だったんだね。予想していたよりもしっかりした内容だったんでびっくりした。
でもやっぱり、芸術家らしい感性が溢れていた。自分の感性に従ってはっきりと好き嫌いを言えるってのは凄い。信念がないと出来ないよな。こういう人達は、本質を見抜き、深く物事を味わえるんだろうなあ。まあ、ないものねだりをしても仕方ないし、自分に出来る範囲内で物事を楽しめればそれで十分ではあるんだけどね。
深めていけばいくほど良い、って単純に言えるものでもないし。本書で日本舞踊について、また神社について語っている部分があるけれど、物事を深めすぎてその本質を見失うってことは往々にしてあることだからな。もちろん、何を重視するか、その価値は人それぞれなんで、他人についてズレているなんて言うつもりはないけど。周りに左右されず、自分自身が価値を感じること、楽しいことを追求していきたい。
沖縄旅行も、自分なりに楽しめるといいな。まあ、僕にとっては旅行すること自体にも価値を見出しているんで、そう過剰に構えてはいないんだけどね。