戦艦大和誕生
戦艦大和誕生〈上〉西島技術大佐の未公開記録 (講談社プラスアルファ文庫)
- 作者: 前間孝則
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/12
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戦艦大和誕生〈下〉「生産大国日本」の源流 (講談社プラスアルファ文庫)
- 作者: 前間孝則
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/12
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「主力艦の建造休止の10有余年間に、他の補助艦や潜水艦、とくに、最後まで制限外におかれた航空機の進歩は、いちじるしいものがあり、大艦巨砲は置き去りにされていたのである。大和、武蔵はほんらい昭和のはじめに建造されるべきものであったのに、(軍縮)条約の拘束により、十数年のストップをくらったのち、それが再現したのだから、大艦巨砲主義は十年のズレをもたらしたといえる。」
「日本には造船技術者、造兵技術者、航空技術者などは、多数いたけれども、国防のカギとなるべき、総合的な時勢のうごきをながめ、技術と工学と生産工業との発展を分析し、技術と兵術との将来を予測する役割の”軍事技術者”は、ただの一人もいなかったという事実を認識することが、大和、武蔵が残した、最大の教訓である、と私は信ずるのである」(堀)
感想
分厚い本で、しかも上下巻で、読むのにかなり時間がかかってしまったけれど、それに見合ったとても読み応えのある本だった。先に読んでいた武蔵製造との比較、また船の生産能力の見積もりの甘さを指摘した本「海上護衛戦」との比較もあって、少しは層の厚い多面的な読書になったかなと、多少興奮しながら読んだ部分もあった。
こうした先進的な仕事をした人たちの貢献があってこそ、今の日本があり、世界がある。人間の積み重ねの力ってのは凄いなと改めて感じた。
同時に、人間の見積もりの甘さとか、組織同士の利権の取り合いとか、希望的観測とか、全体を見ない近視眼的な見方とか、いつの世になっても改善されることの無い人の本性・性向なんかも突き付けられ、溜息と諦めも出てくる。
そして改めて、そういう上や周りからの圧力に晒されないですむ自由を早いところ勝ち取りたい、という思考に結びつく。仕事にまつわる気の重さってのは仕事を続ける限り解消されないものだからな。その日を夢見て、それまでの間頑張っていきたいもんだ。