怨霊になった天皇
- 作者: 竹田恒泰
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/01/30
- メディア: 単行本
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現存する国家のなかで世界最古の歴史を持つ我が国では、先人たちの弛みない営みの結果が現世であるという価値観を持つことは自然な感覚ではないだろうか。
敗者と一体となる和の価値観は、その発端を「古事記」に見ることができる。出雲の国譲り伝説、神武天皇の東征伝説などを筆頭に、様々な所に戦わずして融和する、もしくは戦いの後に融和する姿勢が見える。少なくとも、欧米や大陸のような、相手を攻め滅ぼす価値観は「古事記」には見られない。
米国の歴史において、占領統治が成功したのは日本の一例に限られる。これは日本が積極的に協力して、融和してきたからに他ならない。日本は敗者だけでなく、日本を負かした勝者とも一体となってきたのが歴史的事実である。日本が「和の国」と言われる所以である。
感想
崇徳天皇を中心に、天皇家の怨霊について扱った本。この本の中でも書かれているように、怨霊は死者がなるものではなく、生者がさせるものだからな。当時の人々の価値観や、それに基づいた行動について知ることができ、とても興味深く読めた。
崇徳天皇の祟りによって平氏政権が成立したとか、平家滅亡の折に天皇の武威の象徴である宝剣が失われたことにより、以来天皇に政治権力が戻ってこなかったとか、面白い解釈だなあ。「平家物語」や「源平盛衰記」、「保元物語」なんかも、史実を基に、共通の認識を土台にして物語を膨らませている。なんか面白そうだなあ。興味がどんどん広がっていく。
日本は世界有数の歴史を持っており、しかもその歴史をほとんど全ての日本人が当事者として共有している。だからこそ日本人はみんな、過去を、先祖を大切にしているんだろうな。漠然と行動してきたことを、こうして明確に意識できて良かった。
あと、この本の中で白峯神宮が官幣大社として紹介されている。官幣大社って何だろうと思って調べてみた。神社を等級化したもので、官幣大社が一番格上らしい。まあ、今ではその制度は廃止されたみたいだけど。「社格とはあくまで国家による待遇の差を表したものであり、その神社の崇敬の厚さは関係ない」とのことだが、心惹かれる。全国に60箇所あるうち、僕が行ったことがあるのは3箇所だけ。収集心が疼くなあ。
最後に、どうでもいいことなんだけど、竹田さんは明治天皇と男系では繋がっていないんだね。竹田さんは男系では、能久親王の玄孫に当たる。能久親王は伏見宮邦家親王の第9王子であり、4つあった世襲親王家の血を継いではいるけれど。竹田さん含め、旧皇族で今残っている男系男子は歴代天皇からは相当血が離れていそうだな。第26代継体天皇が継いだ時の10親等の隔たりの比じゃなさそうだ。だから何だってわけじゃないけどさ。